最新記事

テクノロジー

ハンズフリー通話も危険運転になる

2016年6月29日(水)17時30分
エリザベス・バールマン

Fotospeedy/iStockphoto

<運転中の携帯電話の通話は、たとえハンズフリーにしても、ドライバーの注意を散漫にするという研究結果が>

 自動車を運転しながら携帯電話を片手に話をすることは危険だし、多くの国で禁止されている。そこで重宝されているのが、ハンドルから手を放さずに使えるイヤホンマイクなどのハンズフリー通話用の機器だ。

 だが英サセックス大学の研究チームは先頃、ハンズフリー通話でもドライバーが道路状況に十分な注意を払えないことを示す論文を発表した。会話により視覚的な想像をしてしまい、脳の処理能力の奪い合いが起きて、本来なら気付くはずの路上の障害物を見落としてしまうという。

 研究チームは女性40人と男性20人を対象に、車の運転席に座ってビデオを見てもらう実験を行った。

 その際に一部の被験者にだけ、「どこに青いファイルを置いた?」といったような質問を90センチ離れたスピーカーから聞かせる。すると、質問を聞かされた人々はそうでない人々に比べ、道路を横断する歩行者などの障害物に反応するのが平均して1秒近く遅くなったという。

【参考記事】フォルクスワーゲンみそぎなき黒字回復、排ガス不正はなかったことに?

「ハンズフリー機器を使えば安全という一般通念は誤っている」と語るのはサセックス大学のグレアム・ホール講師(心理学)だ。

「ハンズフリー通話でも、ドライバーの注意は(携帯電話を手にして話すのと)同じくらい散漫になる可能性がある。というのも、ドライバーが話している内容を頭に思い浮かべてしまうからだ。この視覚的イメージが、目の前の路上に見えるものを処理する(脳の)能力を横取りしてしまう」

「実際の運転時でも、電話の相手から『どこに青いファイルを置いた?』と聞かれたら、人は心の中で部屋を想起してファイルを探してしまう。相手の顔の表情まで思い浮かべているかもしれない」

すべての通話を禁止すべき

 英運輸省の報道官によれば、運転中に携帯電話を持って通話した場合の罰則強化については検討中だが、ハンズフリー機器の使用を禁止する法改正の予定はないという。

「ハンズフリー機器を使っても注意散漫になりやすいため、ドライバーは電話を使うときには車を止めて安全な場所を探すべきだと現行法には書かれている」と、報道官は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ウェルズ・ファーゴ第1四半期、純金利収入が予想未

ワールド

EXCLUSIVE-トランプ氏の5月訪中、次男エリ

ビジネス

FRB利下げ27年まで延期の可能性、原油高次第=シ

ビジネス

ユーロ圏経済、基本・悪化シナリオの中間 金利政策は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事の新シナリオ
特集:台湾有事の新シナリオ
2026年4月21日号(4/14発売)

地域紛争の「大前提」を変えた米・イラン戦争が台湾侵攻の展開に及ぼす影響をシミュレーション

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍の海上封鎖に中国が抗議、中国タンカーとの衝突リスク高まる
  • 2
    高さ330メートルの絶景と恐怖 「世界一高い屋外エレベーター」とは
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 5
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 6
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 7
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 8
    トランプを批判する「アメリカ出身のローマ教皇」レ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 5
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 6
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 7
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 8
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中