最新記事

ニュースデータ

低収入の教職に優秀な人材は集まらない

教員の給与は世界のほとんどの国で民間平均より低く、日本では都市部で顕著に低くなっている

2016年4月26日(火)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

地域格差 都市部での教員の給与は相対的に見て低い Halfpoint-iStock.

 明治や大正の時代、教員は給与が安くて不人気の職業だった。それは、贅沢ができないというレベルではなく、生活が苦しい程のものだった。大正期の新聞を見ると、「哀れな教員」「先生の弁当はパン半斤」「栄養不良による教員の結核」という記事がたくさん出てくる。

 職業を問われて「教師」と答えるとあわれみの眼差しを向けられ、教員になるのを強いられた青年が自殺する事件まで起きていた(東京朝日新聞,1922年6月28日)。

【参考記事】「世間知らず」の日本の教師に進路指導ができるのか

 今ではそのようなことはないが、それでも教員の給与は民間より安い。2013年の統計によると、中学校教員の月収は、大卒の雇用労働者全体の8割ほどだ。年間賞与(ボーナス)等を含まないことに注意が要るが、教員給与が民間を大きく上回ることはない。

 教員給与の民間平均との比率は、国によってかなりばらつきがあり、その国の若者の教員志望率とも関係している。横軸に中学校教員給与の相対水準(大卒労働者の何倍か)、縦軸に15歳生徒の教員志望率をとった座標上に、26の国を配置すると<図1>のようになる。

maita160426-chart01.jpg

 横軸をみると、教員給与が民間より高い国(倍率1.0以上)は多くない。韓国などの5カ国だけだ。韓国では、中学校教員の給与は同学歴の労働者全体の1.4倍にもなる。儒教社会のためか、教員の社会的地位が高いようだ。

 しかし、このようなケースは少数で、ほとんどの国で教員給与は民間を下回っている。日本は民間の8割、アメリカは7割、チェコやハンガリーといった東欧諸国では半分だ。教員の待遇状況は、若者の教員志望率にも反映され、両者の間には明らかな相関関係が認められる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル建て業務展開のユーロ圏銀行、バッファー積み増し

ビジネス

ドイツの歳出拡大、景気回復の布石に=IMF

ワールド

ウクライナ南東部ザポリージャで19人負傷、ロシアが

ワールド

韓国前首相に懲役15年求刑、非常戒厳ほう助で 1月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中