最新記事

中国

庶民の物価ジョークから考える中国経済改革の行方

野菜や豚肉の価格が高騰する中国。投機マネーを取り締まるはずだった李克強首相の「リコノミクス」はどこへ消えてしまったのか

2016年4月15日(金)15時07分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

物価高騰で庶民が悲鳴 消費者物価指数を見ると、野菜は前月比29.9%、前年同月比30.6%、豚肉は前月比6.3%、前年同月比25.4%の上昇だった(2016年2月) Oktay Ortakcioglu-iStock.

「リコノミクス」という言葉を覚えているだろうか。中国語で書くと「李克強経済学」。李克強首相が主導する経済改革につけられた名称だ。しかし李克強の首相就任から3年、すっかり死語となってしまった。習近平政権は総書記に権力を集中する体制改革を断行し、李克強首相は経済運営の責任者ではあっても、経済改革の担当者という役割からは外されたかのように見える。リコノミクスでぶちあげられた改革プランも停滞し、忘れ去られてしまったものも少なくない。

 今回は庶民の食卓、市場(いちば)の異変から中国の改革の行方を考えたい。

「炒め物が貴族の料理」「コーヒーにニンニク」

「葱爆肉(ネギと豚肉の炒め物)は今や貴族の料理だよ!」

 いきなりこんなことを言われてもさっぱり意味が分からないと思うが、天津市に住む中年女性に聞いたところ、野菜市場で人気のジョークなのだとか。今年2月以来、中国各地で野菜と豚肉の価格が急騰している。ネギと豚肉の炒め物などというお手軽料理ですら高根の花になってしまったという意味だ。

【参考記事】「人民よ、いもを食べろ!」中国じゃがいも主食化計画のワケ

 物価ジョークはこれだけではない。

「今時の金持ちはコーヒーにニンニクを入れるんだよ」(お茶じゃなくてコーヒーを飲むようなハイカラな人たちは、わざわざ値段が高くなったニンニクを入れることで財力を誇示している)

「向前葱」(向前冲〔突撃せよ〕のかけことば。突撃するようにネギの価格が上がるという意味)

「蒜你狠」(算你狠〔おまえのほうがすごい〕のかけことば。"ニンニク様"の値段が力強く上昇しているとの意味)

 正直、日本人が聞いてもさっぱり面白さが分からないジョークだが、天津市の市場ではこれで爆笑間違いなし、なのだとか。食材価格の高騰がそれだけ庶民の関心事になっている証しだ。中国の地元紙にも「息子の大好物の角煮を週1回から月2回に減らしました」「野菜を買う時はいつも量り売りでどっさり買っていたのに、今じゃネギ1本、茄子1個とちまちま購入するように」といった「物価高騰で庶民が悲鳴」系のニュースがあふれている。

【参考記事】「農村=貧困」では本当の中国を理解できない

 中国国家統計局発表の消費者物価指数でも食品価格高騰は裏付けられている。2月期の野菜価格は前月比29.9%、前年同月比30.6%と急騰している。豚肉価格は前月比6.3%、前年同月比25.4%の上昇だ。3月期の統計ではやや下がったものの、依然として高水準で推移している。

価格上昇に中国ならではの2つの要因

 中国政府は天候不順が価格上昇の要因だと説明している。中国に限らず、天候によって生鮮食品価格が上下するのはごくごく当たり前の話だが、実際には中国ならではの要因がある。

ニュース速報

ワールド

米共和党予備選、注目州のウィスコンシンとミネソタで

ワールド

トルコ裁判所、米国人牧師の釈放を拒否=弁護士

ビジネス

中国の成長目標、貿易戦争あっても確実に達成 債務抑

ワールド

マルタに難民救助船が寄港へ、EU5カ国が難民受け入

MAGAZINE

特集:奇才モーリー・ロバートソンの国際情勢入門

2018-8・14号(8/ 7発売)

日本とアメリカ、世界の知られざる針路は── 異能のジャーナリストによるホンネの国際情勢解説

※次号は8/21(火)発売となります。

人気ランキング

  • 1

    亡くなった人の気配を感じたら......食べて、寝て、遊べばいい

  • 2

    死後世界も霊魂もないなら何をしてもいい──を実行した人がいた

  • 3

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 4

    子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう…

  • 5

    性的欲望をかきたてるものは人によってこんなに違う

  • 6

    中国大手32社が「不審死&経営難」海南航空と同じ運…

  • 7

    「トランプが大豆産業を壊滅させた」──悲鳴を上げる…

  • 8

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、…

  • 9

    「俺たちが独り身の理由」、米版2ちゃんで聞いた結果

  • 10

    サーモンを愛する「寿司男」から1.7mのサナダムシ発見

  • 1

    子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう見ていられない」と研究者

  • 2

    ウェスト81センチの巨漢ネコ、パーフェクトボディ目指し監視下に置かれる

  • 3

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 4

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 5

    亡くなった人の気配を感じたら......食べて、寝て、…

  • 6

    イルカとクジラのハイブリッドを確認、世界初

  • 7

    「乱交」で種の境界を乗り越えるサル

  • 8

    人類史上最も残虐な処刑は「首吊り、内臓えぐり、仕…

  • 9

    「いっそ戦争でも起きれば」北朝鮮国内で不気味な世…

  • 10

    サーモンを愛する「寿司男」から1.7mのサナダムシ発見

  • 1

    アマゾンのジャングルに1人暮らす文明と接触のない部族の映像を初公開

  • 2

    子供の亡骸を16日間も離さない母シャチの悲嘆「もう見ていられない」と研究者

  • 3

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 4

    人類史上最も残虐な処刑は「首吊り、内臓えぐり、仕…

  • 5

    インドの性犯罪者が野放しになる訳

  • 6

    怒りの僧侶、高野山への外国人観光客にナナメ上の対…

  • 7

    「何か来るにゃ...」 大阪地震の瞬間の猫動画に海外…

  • 8

    「家賃は体で」、住宅難の英国で増える「スケベ大家」

  • 9

    イルカとクジラのハイブリッドを確認、世界初

  • 10

    実在した...アレクサに怒鳴る男 絶対にお断りした方…

資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
メディアプロモーション局アルバイト募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版

特別編集 ジュラシックパークシリーズ完全ガイド

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2018年8月
  • 2018年7月
  • 2018年6月
  • 2018年5月
  • 2018年4月
  • 2018年3月