最新記事

タックスヘイブン

NYタイムズですら蚊帳の外、「パナマ文書」に乗り遅れた米メディア

2016年4月8日(金)16時28分
小暮聡子(ニューヨーク支局)

 一方で、メディア側の実情を明かしてしまえば、米大手メディアはそもそも「パナマ文書」プロジェクトに軒並み参加しておらず、生データにアクセスできないためにスタート時点では後追い報道しかできなかった、というのがおそらく本音だ。参加メディアのリストはICIJのサイトに公開されているが、アメリカからはニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、ウォール・ストリート・ジャーナル紙など主要紙が参加していない。新聞に限った有名どころで名前を連ねているのは、マイアミ・ヘラルド紙とカリフォルニアを本拠地とするマクラッチー(McClatchy)社くらいだ(本誌ニューズウィークも不参加)。

 日本からは共同通信社と朝日新聞社が参加していて、ICIJのサイトに公開されている参加記者リストには共同通信の澤康臣さん(@yasuomisawa)、朝日新聞の奥山俊宏さん(@okuyamatoshi)の名前がある。他にScilla Alecci さんとAlessia Cerantolaさんも「Japan」として記載されている。

【参考記事】世紀のリーク「パナマ文書」が暴く権力者の資産運用、そして犯罪

 世界的なニュースを一面から外した理由について、ニューヨーク・タイムズ紙のPublic Editor(編集部門から独立した立場で報道内容を検証する役職)であるマーガレット・サリバンは、読者から説明を迫られた。パナマ文書に関する後追い報道記事が同紙ウェブサイトで4日朝に最も読まれた10本に入るなど読者の関心が高いのにもかかわらず、4日の朝刊で「A3面」扱いだったことについて多くの問い合わせを受けたというサリバンは、4日午後、同紙ウェブサイト上で率直に釈明している。

 それによれば、サリバンが同紙Deputy Executive Editorのマット・パーディーに説明を求めたところ、「我々はこの文書があるということも、調査中だということも知らなかった」と答えたという。プロジェクトに参加していないニューヨーク・タイムズは「文書にアクセスすることができなかった」ため、独自取材が十分でないまま作った最初の記事は「一面にふさわしくない」と判断した。パーディーは、現在ニューヨーク・タイムズがパナマ文書にアクセスできないことを「大きな問題だ」として、今後は出てくる情報に独自報道を交えながら報じていくと語っている。

 ICIJのDeputy Directorであるマリーナ・ウォーカーによれば、ICIJが協力体制を敷くのは大手メディアというより「協力的なメディア」だ。他のメディアと情報を共有できるか、情報解禁のタイミングを守れるかなど、ICIJが重視するスタンスに合わないメディアもあるといい、過去に別の報道プロジェクトでニューヨーク・タイムズにアプローチした際には返事さえ来なかったそうだ。その経験が今回の「ニューヨーク・タイムズ外し」につながったのだろうが、一方でライバル関係にある報道機関どうしで「スクープ」を共有することに馴染まないと判断するメディアがあるのもうなずける。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イラン交渉決裂、バンス氏「イランが米条件拒否」

ビジネス

円高につながる金融政策、「一つの選択肢」=赤沢経産

ワールド

アングル:中南米系の共和党支持に動揺の兆し、民主党

ワールド

アングル:結婚式前に手っ取り早くやせたい インドで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけない副作用に研究者が警鐘
  • 2
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦によって中国が「最大の勝者」となる理由
  • 3
    中国が恐れる「経済ドミノ」
  • 4
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人…
  • 5
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    革命国家イラン、世襲への転落が招く「静かな崩壊」
  • 8
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 9
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 10
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 9
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 10
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中