最新記事

安全保障

米ロの軍事「スター・ウォーズ」第2章

2014年12月15日(月)12時19分
ベニー・アブニ

 米本土へのミサイル攻撃を宇宙兵器で撃ち落とすSDIは「スターウォーズ計画」とも呼ばれたが、これがソ連崩壊を早めたと専門家は考えている。その説によればゴルバチョフは、宇宙防衛兵器の開発でアメリカに対抗すれば、急速に悪化しつつあるソ連財政が破綻すると判断。国力復活のために改革を進め、結果的にソ連は解体した。

 最近、ICBM防御を含む宇宙防衛兵器への関心を呼び戻したのが、イスラエルとアメリカが共同開発したミサイル防衛システム「アイアンドーム」だ。今夏の紛争で、パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスからイスラエルに撃ち込まれたロケット弾に対し、アイアンドームは驚くほど高い迎撃率を見せた。

 ICBMはほとんどが地上に配備されているが、支援・誘導システムは宇宙にある。その宇宙で、ある国が別の国にミサイルを誤射したら、初期対応防衛システムが作動し、意図せぬ全面核戦争が勃発するかもしれないと、軍縮問題の専門家は考えている。

 こうした不安からか、またはアメリカに後れを取ることを恐れてか、ロシアは宇宙の軍縮条約につながる国際的合意に向けて努力を倍加させている。

選挙で躍進した米共和党が新たな壁に

 しかし国際社会では、さまざまな国の思惑が影響し合う。国連総会第1委員会での軍縮をめぐる投票結果は地政学の現実と、ロシアとアメリカの相互不信を浮き彫りにした。

 ロシアと中国が提案した国連決議案は賛成126カ国で可決されたが、ほとんどの欧州諸国とアジア・オセアニア地域のアメリカの同盟国など46カ国が棄権した。重要なのは、アメリカとその同盟国イスラエル、ロシアの拡張主義を恐れるグルジアとウクライナの4カ国が反対票を投じたことだろう。

 アメリカは「公正かつ効果的に検証でき、すべての国の安全保障を強化するような宇宙軍縮の提案や構想なら喜んで検討する」と、米代表のクリストファー・バックは述べた。だが今回の中国とロシアの提案は「そうした基準を満たしていない」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と「ディ

ビジネス

ムーディーズ、フランスの見通し「ネガティブ」に修正

ワールド

米国、コロンビア大統領に制裁 麻薬対策せずと非難

ワールド

再送-タイのシリキット王太后が93歳で死去、王室に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 2
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任務戦闘艦を進水 
  • 3
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元に現れた「1羽の野鳥」が取った「まさかの行動」にSNS涙
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 6
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 7
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 8
    アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中