最新記事

タイ

タイでデモが繰り返す理由

バンコクに耐えがたい渋滞を作り出して政権を奪取しようというデモ隊の狙いは

2014年1月14日(火)16時55分

新たな人質 デモ隊の言い分が通る傾向にあるタイで今度は道路封鎖 Nir Elias-Reuters

 普段からひどい渋滞に悩まされているタイの首都バンコクの道路状況が、今以上に悪化しそうだ。

 反政府デモ隊は現在、バンコク市内で最も交通量の多い交差点7カ所を封鎖している。彼らの戦術は、耐えがたいほどの渋滞を作り出すことで総選挙を中止に追い込み、選挙ではなく利益団体の代表で作る「人民議会」に政府の権力を移譲させることだ。

 「バンコク選挙作戦」と呼ばれる今回の暴動は、昨年12月に発生した政府や省庁の占拠騒動に続く最新の抗議活動。今回のデモで、11年の選挙で勝利したインラック・シナワット首相率いる議会は解散に追い込まれ、来月初頭に総選挙が行われることになった。

 だがデモ隊は、政権側の譲歩に満足していない。バンコク選挙作戦の指導者や信奉者らは、政府がすべての要求を受け入れるまで首都交通の要所を封鎖すると断言している。

 クーデターという言葉を意識的に回避しながらも、デモ隊のリーダーたちが政権の奪取を目指しているのは明らかだ。リーダーのステープ・トゥアクスパン元副首相は、政府を支配してタイの汚職を一掃するために人民議会を設置すると宣言している。

 道路封鎖が長引けば、経済的打撃も大きくなる。タイ商工会議所大学によれば、封鎖により日に3000万ドルの損出が出る可能性がある。すでにデモがらみで8人が死亡しており、流血の事態に発展するリスクも高い。

 いつまで封鎖が続くのかを予測するのは難しい。ステープ元副首相は「勝利するまで戦う」と気勢を上げており、デモ隊の別のリーダーであるニティトン・ラムルアも、インラック首相が1月15日までに国外退避しなければ航空管制センターを封鎖すると脅している。

 13日には何万人もの市民がデモに加わっている。現在、デモ隊の規模は最大で20万人に達しており、警官や治安部隊は2万人ほど配備されている。

デモに慣れっこの住民

 反政府運動は、タイの歴史上もっとも成功し、しぶとい政党の1つであるタクシン派を根絶させることに主眼を置いている。

 強力なタクシン一族が率いるこの政治勢力は、過去10年以上すべての大きな選挙で勝利を収めてきた。指導者のタクシン・シナワット元首相は06年のクーデターで職を追われ、現在は汚職で投獄されるのを避けるためにドバイに亡命している。現在のインラック首相(46)は彼の妹だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ会長、マスク氏の後継CEO探し否定 報道は「

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道

ビジネス

NZフォンテラの消費者事業売却、明治など入札検討か

ビジネス

三井物産、26年3月期純利益は14%減見込む 資源
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中