最新記事

ウィキリークス

アサンジがロック・フェスに出る意図

性的暴行疑惑の渦中に、故郷オーストラリアの一大ロック・イベントにどんなビデオメッセージを送るのか

2011年7月22日(金)16時06分

英雄か極悪人か 審理ために英高等法院に姿を見せたアサンジ(7月12日) Suzanne Plunkett-Reuters

 内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジが来週、出身地オーストラリアで開かれるロック・フェスティバルに登場する。アサンジが姿を見せるのは、北東部クイーンズランド州ウッドフォードで開かれる「スプレンダー・イン・ザ・グラス・フェス」。冬のオーストラリアでは最大の野外フェスとして知られ、今年はコールドプレイやカニエ・ウエストの出演も決まっている。冬場にもかかわらず、昨年は3万人を超える来場者が集まったという。

 とはいえ地元紙によれば、アサンジは実際にステージに上がるわけではなく、インターネット規制に関するパネルディスカッションにて、ビデオメッセージという形で登場するらしい。現在アサンジは、昨年夏にスウェーデンで性的暴行をはたらいた容疑をかけられ、イギリスで自宅軟禁状態に置かれている。

 3日間にわたるフェスの初日、7月29日に行われるパネルディスカッションの目玉は、アサンジの母親クリスティーン・アサンジ。他にもアサンジの弁護士や、ハッキングについての本をアサンジと共著したスーレット・ドレイファスなどが登場する。

 パネリストとして集まるのは「ジュリアンと親しい人たちや、水面下で本当は何が起きているかを知る人たち」だと、クリスティーンは言う。「主要メディアが知ろうともせず、ねじ伏せてきた情報を直接聞くことができる貴重な機会だ」

外交公電暴露の報復の犠牲者

 パネルディスカッションにはこんな副題が付いている。「政府や大企業からウィキリークス、ハッカー集団のアノニマスまで。ネット上の秘密を支配するのは誰?」

 主催者によれば、アサンジのビデオは集まった音楽ファンに向けて、「ウィキリークスとアサンジ逮捕に隠された真実と、それらがオーストラリアや世界の若者にとって何を意味するか」を伝えるものだという。

 アサンジは、事情聴取を理由にスウェーデンが求めている身柄引き渡しは不当だと訴えてきた。12日にロンドンの高等法院で始まった2審の審理では、スウェーデンに移送されれば性的暴行疑惑について公正な裁判を受けられないと主張した。

 それどころか、いったんスウェーデンに行けば、アサンジを起訴したがっているアメリカへと移送されかねないと訴えている。アサンジ率いるウィキリークスは昨年、アメリカの外交公電を暴露し、米政府だけでなく世界に散らばる各国の外交官たちの面子を潰した。

 アサンジは現在、警察と毎日欠かさず連絡を取ることや、居場所を知らせる電子タグ付きブレスレットの着用を義務付けられている。スウェーデンへの移送の是非については書面で通知されることになったが、期日は定められいない。結論が出るまでには、まだ時間がかかるかもしれない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

台湾輸出額、2カ月連続で過去最高更新 米関税巡り需

ビジネス

独裁国家との貿易拡大、EU存亡の脅威に=ECBブロ

ビジネス

ドイツ輸出、5月は予想以上の減少 米国向けが2カ月

ビジネス

中国自動車販売、6月は前年比+18.6% 一部EV
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 5
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    米テキサス州洪水「大規模災害宣言」...被害の陰に「…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 10
    中国は台湾侵攻でロシアと連携する。習の一声でプー…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 8
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 9
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中