最新記事

温暖化

気候変動版「ウォーターゲート」の衝撃

研究者のメール大量流出で気象データの操作疑惑が浮上。COP15を目前に、温暖化対策を根底から揺るがすスキャンダルに発展するか

2009年11月25日(水)19時12分
イブ・コナント(ワシントン支局)

データ操作はあったのか 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の権威にも疑問の声が上がっている(左から2番目はIPCCのパチャウリ議長) Heino Kalis-Reuters

 12月7日にデンマークのコペンハーゲンで始まる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を目前に、気候変動の研究者たちの私的な文書が大量流出し、地球温暖化に懐疑的な人々の格好の餌食になっている。

 流出したのは、研究者たちの個人的な電子メールや文書。英イースト・アングリア大学気候変動研究科のサーバーから盗まれたもので、先週からインターネット上に出回っている。問題はその中に、人間が地球温暖化を招いていることを示すために、研究者たちがデータを操作しているように思える内容があったことだ。

 ウォーターゲートならぬ「クライメートゲート」と名づけられたこの騒動は、ますます大きくなっていると、保守系コラムニストのミシェル・マルキンはブログに書いている。「データ操作の調査を行うべきだという主張がイギリスでもアメリカでも高まっている」

 保守系ジャーナリストのマイケル・ゴールドファーブはウイークリー・スタンダード誌のブログで、ニューヨーク・タイムズ紙の消極的な報道姿勢を批判している。この手の情報は「リベラル派のアジェンダを妨げる可能性がある」ため、同紙はまともに取り上げないだろうというのだ。

「戦場で米兵の命を危険にさらすかもしれない機密情報、あるいは国家安全保障にとって重大なものなら、迷わず掲載するはずだ。しかし今回の場合は、『公開を意図していない』文書だという理由で掲載を見送るだろう」

クリントンの不倫疑惑と共通点

 ゴールドファーブが特にやり玉にあげているのは、同紙の環境ブログ「ドット・アース」。執筆者のアンドリュー・レブキンが、「(メールは)違法な手段で入手されたとみられるため、このブログには掲載しない」と記した部分に言及している。

 しかしレブキンはそのすぐ後に、「ただし懐疑派のサイトを見れば、多くの情報が見つかるだろう」として、メール内容を公開するページのリンクを張っている。さらに23日には、このニュースを報じたニューヨーク・タイムズの記事にリンクを張り(問題のメールも部分的に掲載している)、今後も続報があるだろうと書いている。

 一方、保守系ジャーナリストのクリス・ホーナーは、ナショナル・レビュー誌のブログ「プラネット・ゴア」で、今回の騒動をクリントン元米大統領の不倫疑惑になぞらえている。

「BBC(英国放送協会)は(気候データの操作疑惑を)1カ月以上伏せていたらしい。今回のスキャンダルは、地球温暖化に関連する業界の『青いドレス』になるだろう(クリントンの精液がついたモニカ・ルインスキーの青いドレスが不倫の動かぬ証拠となった)。私たちが無関心な記者やプロデューサーにずっと訴えてきた不正を、メディアはもう無視できなくなる」

 メディアはデータ操作が行われていることを知っていたのに、見て見ぬふりをしてきた――ホーナーはそう言いたいようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア、イスラエルAI新興買収へ協議 最大3

ビジネス

ワーナー、パラマウントの最新買収案拒否する公算 来

ワールド

UAE、イエメンから部隊撤収へ 分離派巡りサウジと

ビジネス

養命酒、非公開化巡る米KKRへの優先交渉権失効 筆
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中