最新記事

報道写真

それでも私がトランプから勲章を受け取った理由

Why I Accepted the Medal

2021年3月8日(月)11時30分
ニック・ウット(元AP通信カメラマン)

ウットは「大統領からの勲章」という点に意義を感じている MARK EDWARD HARRIS

<暴動の数日後に国民芸術勲章を授与された「ナパーム弾の少女」のカメラマンの心の内>

カメラマンのニック・ウットがドナルド・トランプ米大統領(当時)から国民芸術勲章を授与される2日前、別の著名人が受章を辞退した。NFLのニューイングランド・ペイトリオッツのヘッドコーチ、ビル・ベリチックだ。彼はトランプの長年の友人で、ウットと同じ週に大統領自由勲章を授与される予定だったが、1月6日の連邦議会議事堂での暴動という「悲劇的な出来事」を理由に辞退した。

それでもウットは辞退しようとは思わなかった。ベトナム出身で、2017年まで50年以上もAP通信のカメラマンとして勤務した彼にとって、授与式は個人的な節目であり、長いキャリアの頂点だった。

彼の写真で最も有名なのは、ベトナム戦争でナパーム弾から逃げまどう子供たちを捉えたものだが(裸の少女が泣き叫ぶこの「ナパーム弾の少女」は世論を変えた)、山火事や暴動、ハリウッドのセレブなども撮影してきた。なぜトランプからの勲章を受け取ったのか、ウットが本誌ジェニー・ハワードに語った。

◇ ◇ ◇

ドナルド・トランプ大統領が私にホワイトハウスで国民芸術勲章を授与したがっていると聞いたときは、とても興奮した。授与式は昨年3月の予定だったがコロナ禍の影響で延期された。1月13日に決まったと12月に連絡があった。

1月11日に友人でカメラマンのマーク・エドワード・ハリスとワシントン入りし、議事堂の周りで少し写真を撮った。州兵の写真を何枚か、そして(議事堂での暴動で)死亡した警官にささげられた花束の写真。いい1枚だった。

私はこれまで暴動や抗議活動を数多く撮影してきた。ロドニー・キング事件に端を発した1992年のロサンゼルス暴動や、昨年のBLM(黒人の命は大事)運動などだ。危険はあるかもしれないが、ベトナム戦争で写真を撮った経験もあり、むちゃはしない。議事堂での暴動は悲しい光景だった。抗議は平和的にやるべきだ。抗議するのに人を殺す必要はない。

暴動前のトランプ支持集会は見ていない。私が勲章を受け取ることに怒っている人も多いだろう。だが私の人生だ。私はもう老人で、トランプ大統領が賞をくれるのはうれしい。大統領からの賞というところに意義がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英GSK、1─3月利益と売上高が予想超え 通期利益

ビジネス

JPモルガン、ロシアで保有の資産差し押さえも

ビジネス

ユナイテッドヘルス、サイバー攻撃で米国人情報の3分

ワールド

原油先物4日ぶり反発、米の戦略備蓄補充観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中