最新記事

米メディア

ウェブ記事のタダ読み時代、遂に終止符?

いかにしてウェブ記事から金をとるか、何年も試行錯誤を続けてきたニューヨーク・タイムズがたどりついた成功モデル

2012年3月21日(水)16時31分
タリア・ラルフ

有料でもイケる 課金すると読者が逃げるという業界最大の恐怖は杞憂だった? Gary Hershorn-Reuters

 米ニューヨーク・タイムズ紙のウェブサイトで、閲覧者の前に立ちはだかる「課金の壁」が今まで以上に高くなる。3月20日、同紙は無料で読める記事の本数を現在の月20本から10本に減らすと発表した。変更は4月1日から導入される予定だという。

「有料購読者との公平さを考えると、無料でアクセスできるのは、トップページやセクションごとのトップページに加えて、月に10本の記事ぐらいがちょうどいいだろう」と、同紙の広報担当アイリーン・マーフィーは言う。

 現在、有料購読の登録をしていない人が無料の上限(20本)を超えて記事を閲覧しようとすると、画面上に購読契約を勧める登録画面が表示される。だが、ツイッターやフェイスブック、ブログなどに張られたリンクから同紙の記事にジャンプしてきた場合は、上限を超えても無料でいくらでも読めるという「抜け穴」がある。

 多くの人が課金の壁を回避しようと、この抜け穴を利用している。例えばツイッターの「@freeNYTimes」というアカウントは、同紙へのリンクだけを「つぶやき」として載せている。ニューヨーク・タイムズはツイッターに対し、このアカウントを無効にするよう要請した(だがこのアカウントが同紙のロゴを使用するのをやめただけで、無効の要請は取り下げた)。

有料化後もアクセス数は変わらず

 ニューヨーク・タイムズがウェブサイトの有料購読システムを導入したのは1年前。現在、同紙メディアグループがウェブ上で提供するさまざまなコンテンツを利用するために有料で会員登録を行っているのは、実に45万4000人に上る。

  ニューヨーク・タイムズ紙の成功は、ウェブ記事に購読料を求めるビジネスモデルが受け入れられるのかという業界最大の恐怖が杞憂に終わったことを証明したと、出版業向けのコンサル会社で上級アナリストを務めるケン・ドクターは金融情報サイトのマーケットウオッチに語っている。つまり課金のうまい方法さえ見つければ、読者が減って広告収入を失うこともなく、購読料を稼ぐことができる。

 現にニューヨーク・タイムズのサイトへのアクセス数は、課金を始めてからも減っていないと、同紙広報のマーフィーは言う。11年1月のサイト訪問者数は世界で4846万3000人だったが、今年1月も4794万4000人を維持している。「私たちのサイトへのアクセス量は、むしろ世の中でニュースの盛り上がるタイミングと関係している」と、マーフィーは言う。

 長らく米ウォールストリート・ジャーナルや英フィナンシャル・タイムズでしか成功できないと言われていた新聞のウェブ版の課金制がニューヨーク・タイムズでも成功すれば、ネットで新聞記事をタダで読める時代は過去のものになるかもしれない。


GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、台湾・鴻海と追浜工場の共同利用を協議 EV生

ワールド

マスク氏新党結成「ばかげている」、トランプ氏が一蹴

ワールド

米、複数の通商合意に近づく 近日発表へ=ベセント財

ワールド

米テキサス州洪水の死者69人に、子ども21人犠牲 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗」...意図的? 現場写真が「賢い」と話題に
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    コンプレックスだった「鼻」の整形手術を受けた女性…
  • 7
    「シベリアのイエス」に懲役12年の刑...辺境地帯で集…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 10
    ギネスが大流行? エールとラガーの格差って? 知…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中