最新記事

アメリカ社会

懲りない右派の国勢調査トンデモ陰謀論

医療保険改革の次に右派が社会主義批判の対象に選んだのは10年に1度の国勢調査。馬鹿げた陰謀論が飛び交うなか、保守派の重鎮カール・ローブが意外な行動に

2010年4月6日(火)17時44分
マーク・ホーゼンボール(ワシントン支局)

右派もいろいろ ローブは国勢調査は合衆国憲法の精神に沿ったものだと国民に請け合い、協力を訴えた Fred Prouser-Reuters

 オバマ政権が10年に1度の国勢調査のために調査員を大量に投入するなか、右派のウェブサイトでは「国勢調査は共産主義や全体主義への第一歩だ」という陰謀説が本気で盛り上がっている。

 だが4月5日、右派の意外な有力者が国勢調査を強力に擁護した。ブッシュ政権で次席補佐官を務め、オバマ政権への辛口批判で知られるカール・ローブだ。

 全米の地方テレビ局で5日に放映された国勢調査のCMでローブは、アメリカで初めて国勢調査を行ったのは、彼が歴代大統領の中で最も尊敬しているジェームズ・マディソン第4代大統領だったというエピソードを語っている。「合衆国憲法の執筆者の一人であるマディソン大統領は、国会議員を公正に選出するために10年に一度の国勢調査を行うよう憲法に明記し、民主主義の手段を作り出した」

 さらに、ローブはこう続けた。「国勢調査票を送り返していない人も、まだ間に合います。どうか10の簡単な質問に答えてください。この質問は、マディソンが作成に関わった1790年の初の国勢調査とほぼ同じものです」

「調査票を配らない共和党員外し」

 国勢調査局の主席広報官スティーブ・ジョストは本誌電子版の取材に対し、ブッシュ政権の重鎮だったローブが国勢調査のCM出演に同意したのは、マディソンへの尊敬の念が強かったためだと語った。(ローブの事務所にも取材を申し込んだが、返事はない)。

 ローブのCM出演は、オバマ政権が国勢調査を悪用するという突飛な噂が飛び交う最中に実現した。ちょうどCMが放映された5日にも、保守派の人気トークショー司会者ラッシュ・リンボーが自身の番組内で新たな説を唱えたばかりだ。

 リンボーは、国勢調査局は共和党支持者の数を少なくみせるために、共和党員が多いエリアに調査票を配っていないと訴えた。「私は1970年に実家を離れて以来、一度も国勢調査票を見たことがない」
 
 リンボーはさらに、意味ありげにこう締めくくった。「同じことが広範囲で行われているんじゃないか。共和党支持者が多い地域に調査票を送らなかったり、調査員が訪問しなかったり。何が行われていても驚かない」

人種を尋ねるのは奴隷制復活のため

   一方、国勢調査局のジョストは「国民全員を調べることがわれわれの任務だ。誰一人として調査対象から外すはずがない」と反論している。

 オバマ政権が国勢調査を悪用しているという噂を広めようとしている右派は、リンボー以外にも大勢いる。とりわけ執拗に陰謀説を唱えるのは、右寄り報道で知られるFOXニュースの司会者たち。例えば人気キャスターのグレン・ベックは、人種に関する質問項目があるのは、国勢調査局が奴隷制を推進しようとしている表れだと示唆した。

 保守派キャスターのミシェル・マルキンも、民主党が永続的に議会で過半数を維持するための「洗脳工作」に国勢調査が利用されていると主張している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ米大統領、自身のSNSに投稿された人種差別

ビジネス

アングル:インド「高級水」市場が急成長、富裕層にブ

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、リスク資産反発受け 円は衆

ワールド

トランプ氏、インドへの25%追加関税撤廃 ロ産石油
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 2
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 3
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入った「最強ライバル」の名前
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 7
    鉱物資源の安定供給を守るために必要なことは「中国…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    「こんなのアリ?」飛行機のファーストクラスで「巨…
  • 10
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 9
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 10
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中