最新記事
発達障害

自閉症は人類の脳が「進化した結果」との研究結果...脳の発達の遅れが進化に貢献した可能性も

Human Evolution May Explain High Autism Rates

2025年9月25日(木)18時20分
ルーシー・ノタラントニオ

人間の脳と遺伝的変化の関係は

科学者たちは、単一細胞RNA配列解析の進歩により、脳内の細胞の種類に驚くほどの多様性があることを突き止めた。

並行して、大規模な遺伝学的研究によって、人間の脳における他の哺乳類には見られない大きな変化も明らかになっている。

こうしたゲノム要素は、他の哺乳類では長い進化のあいだほとんど変化しなかったのに、人類では急激に進化した。


ホモ・サピエンスと他の異なる種の脳サンプルを分析したところ、大脳皮質の外層に最も多く存在する「L2/3 ITニューロン」と呼ばれる神経細胞のタイプが、ホモ・サピエンスは他の類人猿と比較して、急速に進化していたことがわかった。

この急激な変化は自閉症と関連する遺伝子の大きな変化と一致していることから、自閉症も人類特有の自然選択圧によって形作られた可能性が高い。

しかし、こうした変化が人類の祖先にもたらした進化的な利点は、いまだ明確になっていない。研究チームによれば、これら多くの遺伝子は発達の遅れと関係していることから、チンパンジーに比べて人間の脳の出生後の成長が遅いことと関係している可能性がある。

また、発話と言語理解といった人間特有の能力も関係していると考えられる。

実際、自閉症に関連する遺伝子の進化が、初期の脳の発達を遅らせたり、言語能力を拡張したりすることにより、幼少期に学習と複雑な思考ができるようになるための時間的な猶予を広げたという仮説も存在する。そして、自閉症に起因する発達の遅延が、より高度な推論能力を育むための時間を確保することこそが、進化における利点となった可能性もあるのだ。

自閉症は「障害」ではなく、人類の進化から生まれた副産物なのかもしれない。

【参考文献】
Starr, A. L., & Fraser, H. B. (2025). A general principle of neuronal evolution reveals a human-accelerated neuron type potentially underlying the high prevalence of autism in humans. Molecular Biology and Evolution.

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、グリーンランド取得へ選択肢協議 軍活用

ワールド

米、ウクライナ「安全の保証」を支持 有志国連合首脳

ビジネス

サウジアラビア、金融市場を来月から全ての外国人投資

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、経済指標に注目 ベネズエラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが「手紙配達」をやめた理由
  • 4
    「見ないで!」お風呂に閉じこもる姉妹...警告を無視…
  • 5
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 6
    「悪夢だ...」バリ島のホテルのトイレで「まさかの事…
  • 7
    若者の17%が就職できない?...中国の最新統計が示し…
  • 8
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 9
    砂漠化率77%...中国の「最新技術」はモンゴルの遊牧…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中