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進化論

人類は「進化の常識」から逸脱した存在...最新研究が示す、人類を進化させる「遺伝ではない」要因

Humanity Undergoing Major Evolutionary Shift, Study Suggests

2025年9月18日(木)18時15分
マリア・アズーラ・ボルペ
人類の進化のイラスト

人類の「進化」は従来の枠組みに収まらないのかもしれない Distr4ksi-shutterstock

<進化とは本来、遺伝的適応などによって生物集団の遺伝子頻度が世代を超えて変化する現象だが、人類の進化については、その定義が当てはまらないかもしれない>

メーン大学の研究者らは、人類の進化はもはや遺伝的な要因によって左右されてはいない可能性があるという新理論を提唱した。

この理論は、文化的な仕組みこそが人間の生存、適応、繁殖のあり方を形づくっていると主張している。


経済学および持続可能性を研究するティモシー・M・ワーリング准教授と、生態学および環境科学を研究するザカリー・T・ウッドは、文化進化が遺伝進化を凌駕し、人類の発展を左右する主たる力になっていると論じた。

彼らの理論によれば、人類は現在、「大きな進化的転換期」を迎えている。その中で、技術、制度、共有された知識といった文化的要因が、生存や成功を決定づける主要因となりつつあるという。

「人類が互いに役立つ技能や制度、技術を学び取るとき、それは環境に適応した文化的実践を『継承』している」とワーリングは指摘する。文化は遺伝進化よりもはるかに迅速に問題を解決することができるという。

彼らは実例として、眼鏡、帝王切開、不妊治療を挙げた。これらはいずれも、かつては生存や繁殖に支障をきたしたはずの生物学的制限を克服する手段だ。これによって、生物学的制限を遺伝子レベルで克服する必要性が軽減されている。

「文化進化は遺伝進化を朝食のように平らげてしまう。比べ物にならない」とウッドは語る。この変化は何千年も前から進行しており、現代ではさらに加速している可能性があるとも指摘した。

「自分の人生の結果を左右するのは、生まれ持った遺伝子か?それとも、生きている国か?」とワーリングは問いかける。彼は、現代社会では、個人の生物学的要因よりも文化的要因のほうが人間の幸福を左右していると主張する。

これは、人類がより集団志向になり、共同体的なシステムへの依存を強めていることを意味している。「人間であること」の意味そのものが変化しつつあるということだ。

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