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BLACKPINK、TWICE、NewJeansだけではなかった 韓国ディープフェイク性被害は中学生や女性兵士にまで

2024年9月5日(木)14時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

お前の知人を傷つけてやる

このソウル大学の事件をきっかけとして、インチョン市にあるインハ大学でもテレグラムに1200人が参加するディープフェイクのチャットルームが開設されていることが発覚。これは2020年に開設され、被害女性は把握された者だけで30人を超え、このうち3分の2がインハ大生で、いずれも学内の有名サークル所属だったという。被害者の一人で卒業生のユ氏は、あるとき「テレグラムのチャットルームにあなたの顔を合成した写真と個人情報が共有されている」という匿名のSNSメッセージを受け取った。ユ氏がチャットルームに入ってみると、連絡先や学生番号などの個人情報とともに、女性の裸の写真にユ氏の顔を合成したディープフェイクが数十個アップされているのを確認したという。

ユ氏がチャットルームを訪れた後、彼女のアカントには「チャットルームで見た」「本人に間違いない」というメッセージが飛んできて、通話をかけてもユ氏が出ないといきなり罵声を残す者もいたという。これをユ氏が無視していると加害者たちはユ氏の知人たちの写真でディープフェイク画像を作成し、「お前のせいで彼女たちが被害を受ける」「凶器でお前の知り合いを傷つけてやる」と脅迫するまでに至った。ユ氏はこうした脅しにも屈せず、自分のディープフェイク写真をダウンロードして10回連絡をしてきた男1人の正体を突き止めて、警察に告発した。この男は性暴力処罰法違反の疑いで起訴され、懲役1年が宣告されたという。ユ氏が自分のディープフェイク画像があることを知らされてから1年2カ月が経っていた。

女性兵士のディープフェイク=「軍需品」

このようにディープフェイクが問題化する中で、韓国軍の女性兵士も犠牲者になっていることが明るみになった。問題のチャットルームでは、女性兵士のディープフェイク画像を「軍需品」と呼称しており、「女性軍人を許すことはできない」「剥がして壊す」というメッセージも掲示されていた。

参加するためには「軍需品」にしたい女性兵士の軍服写真に加えて電話番号と所属、階級と年齢といった個人情報を運営者に提出したり、現役軍人であることを証明しなければならないという。あるいはディープフェイク職人か、管理者が指定した女性兵士に陵辱的メッセージを送りその反応をキャプチャした画像を送ることで加入が許可された。

ただ、先のインハ大学のディープフェイク事件が明るみになって、ディープフェイクがマスコミなどで問題化されると、管理者らは潜入取材などを恐れたのか、「当分の間、ディープフェイク職人あるいは管理者が指定した『陵辱メッセージ』を送るミッションを遂行した人以外には新規加入は受け付けない」と追加公示を掲げた。

女子中学生、そして教師までも

ディープフェイクの被害は、義務教育の場にまで広がっていた。中学生のAさんは最近、友達からディープフェイクで作成したわいせつ画像のチャットルームに、自分と友達の写真が掲載されていると言われたという。そのチャットルームは参加者が2000人を超えていた。

「ニュースでは見ていましたが、周りの人たちも皆自分が被害を受けるとは思いませんでした。被害を受けた子たちが、本当におびえた表情で学校に来てました」

しかし、警察では合成されたわいせつ物が確認されなかったと言われ、何も対応してもらえなかったという。

「両親と(警察署に)行ってきたんです。でもそこでは「裸体と合成されたわけではないから何も解決できることがない」と言われて......」

一方で加害者側が中学生だったという事件も起きている。しかも被害者は担任の女性教師だった。教師のBさんは7月、SNSでメッセージを受け取った。担任するクラスの生徒がBさんの写真でディープフェイク画像を作成したという内容だった。

「生徒がこのようなことをしたということ自体が私はちょっと信じがたい状況で......」

問題の生徒はディープフェイク画像作成の事実を認め、強制転校処分を受けた。ただ転校した先の学校は歩いてわずか10分ほどしか離れていなかったという。

「他の子たちも信じられないんです。回して見たんじゃないかという気もするし......」

一連のディープフェイクによる被害を重く見た韓国教育部(日本の文科省に相当)は、地方の教育庁を通じて調査した結果、今年1月から8月27日までの期間に、学生および教員のディープフェイク被害件数が学生被害が186件、教員被害が10件、計196件確認されたと明らかにした。教育部は学生・教員の不安感を解消するために緊急タスクフォースを設置する一方、関係部署による対策会議などを経て10月中に教育分野ディープフェイク対策を策定するという。

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