最新記事

DX

経済成長しても「技術はない国」だったはずの中国は、なぜDX大国になれた?

2022年2月9日(水)17時23分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)
デジタルアート・イベント

香港のデジタルアート・イベント Tyrone Siu-REUTERS

<テクノロジーを基にしたイノベーションの中心地はアメリカだけではない。中国はどうやって、どこまで「産業昇級」を進めたのか>

「産業昇級(産業アップグレード)」「行業解決方案(業界別ソリューション)」──ここ数年、中国のIT系展示会に行くと、一番多く目にする単語だ。日本で言うDX(デジタル・トランスフォーメーション)を指す言葉として、広く使われるようになった。

今や中国が世界的なデジタル大国であることは広く知られている。中国発のイノベーションとして知られるモバイル決済は日本でもようやく普及しつつあるが、中国のEC(電子商取引)は浸透率、取引額ともに世界一。世界的なブームとなった音声ソーシャルメディア「クラブハウス」も、実は中国発のアイデアと技術を使ったアプリだ。

デジタル化の発展とともに世界的企業も生まれている。世界企業時価総額ランキングでは、GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)の米国勢に続き、ECのアリババグループ、ゲーム・メッセージアプリのテンセントが上位を占める。

日本でも人気の動画アプリ「TikTok」を擁するバイトダンスは、ユニコーン企業(評価額10億ドル以上の未上場企業)で世界トップの評価額を誇る。

2010年代に4Gとスマホで状況が一変

「経済力は伸びても、まだまだ技術のない途上国」、そんな中国への見方が一変したのは2010年代から。4G通信とスマートフォンの普及で始まったモバイルインターネットの波に乗り、中国企業は次々と目覚ましいイノベーションを生み出してきた。そして次なる戦場として、DXが強く意識されるようになった。

この転換には技術的背景がある。4G通信は主にスマホに活用され、人間が高速インターネットに常時接続できる社会をもたらした。そして、いま始まりつつある5G通信は本格的なIoT(モノのインターネット)時代を到来させる。莫大な数のカメラ、センサー、電子機器がインターネットに接続し、リアルタイムで詳細なデータを生み出す。

そうしたデータを統合、分析することで、新たな価値を生み出し、既存のビジネス、業界を塗り替えていく。この未来図に突き進んでいるわけだ。

いくつか具体例を挙げよう。通信機器・端末大手ファーウェイが打ち出したのがスマート鉱山ソリューション。最大の売りは5G通信による重機やトラックの遠隔操作で、危険な現場で働く人員を減らすことができる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダ、半導体不足打撃で通期予想を下方修正 四輪販

ワールド

ロシアの限定的なNATO攻撃、いつでも可能=ドイツ

ビジネス

FRB、近くバランスシート拡大も 流動性対応で=N

ビジネス

再送-TOPIX採用企業は今期6.6%減益予想、先
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中