最新記事

DX

経済成長しても「技術はない国」だったはずの中国は、なぜDX大国になれた?

2022年2月9日(水)17時23分
高口康太(ジャーナリスト、翻訳家)

社会が豊かになるにつれ、年々、3K現場での作業員確保が難しくなるなか、中国でも省人化は焦眉の課題。また、坑道内にもインターネットを張り巡らし、監視カメラやセンサーからデータを収集することで、安全確認、人員管理、リアルタイムの生産量把握が可能となる。

鉱山の生死を決めるのはコストだ。たとえ資源を掘り尽くしていなくても、コストが利益を上回れば採掘は続けられない。逆に高騰する安全コストを削減することは、そのまま鉱山の寿命を延ばすことに直結する。

アリババグループが打ち出した、一風変わったソリューションがAI養豚。中国は世界一の豚肉生産国だが、畜産農家の大半は中小零細事業者で、技術力の低さが問題だった。

アリババグループは体に描いたQRコード型の印や声紋認識を使った個体管理、AIカメラによる豚の行動データ取得により、技術のない畜産農家でも効率よく飼育できる仕組みを整備している。

また単なる生産サポートにとどまらず、飼育データを小売店舗と共有することで、いつどこで育てられた豚かというトレーサビリティーを実現することを目指している。

18年のAI養豚発表時にアリババクラウドの総裁(当時)は、豚の行動データを活用することで、「出荷されるまでに200キロも走り回った健康豚」といった新たなブランディングも可能になるとの未来図を示した。生産現場の革新を商品の付加価値に直結させようとするアイデアだ。

長距離トラック版のウーバー

21年6月22日に米ニューヨーク証券取引所に上場した「満幇集団(フルトラックアライアンス・グループ)」は、荷主と長距離トラック運転手のマッチングを行うトラック版ウーバーだ。

対面や電話での交渉という煩雑なやりとりから解放されただけではなく、トラックの空き状況の可視化、取引データによるトラック運転手への信用供与などの関連サービスも広がっている。

DXの第一歩として、チームスやスラックなどのコラボレーションツールを導入する日本企業がようやく増えつつあるが、中国ではバイトダンスのLARK、アリババグループのディントーク、テンセントのウィーチャット・ワークという自国産サービスがシェアを取っている。

ビデオ会議、ドキュメントやカレンダーの共有、タイムカードの打刻、有休や経費の申請、上司の決済などの機能が最初から盛り込まれたオールインワンになっている点や、モバイルインターネット大国だけにスマホファーストの作りになっている点が特徴だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化

ビジネス

デジタルユーロ、大規模な混乱に備え必要=チポローネ

ビジネス

スウェーデン、食品の付加価値税を半減へ 景気刺激へ

ワールド

アングル:中ロとの連帯示すインド、冷え込むトランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中