最新記事

SNS

フェイスブックに内部告発「ザッカーバーグが知っていたこと、やらなかったこと」

What Zuckerberg Knew

2021年10月11日(月)17時35分
アーロン・マク

211019P35_FBK_01.jpg

「憎悪」などと記されたフェイスブックに見立てた青い怪物が「正義」(左)の制止を振り切る(2020年2月、ドイツの祭り) FEDERICO GAMBARINIーPICTURE ALLIANCE/GETTY IMAGES

では、彼のどこがいけなかったのか。

それはフェイスブックの各種プラットフォームがユーザーに害を及ぼしている証拠が出てきたときに、ユーザー離れや自社の成長への悪影響を恐れて軌道修正を怠ったことだ。

その最も分かりやすい例は、2018年のニュースフィードのデザイン刷新かもしれない。企業や政党よりも、友人や家族の投稿を優先的に表示するよう変更したのだ。

背景には、同社が2016年の米大統領選後に直面した批判(ケンブリッジ・アナリティカ社に流出したユーザーの個人情報が選挙に利用された問題など)があった。

ザッカーバーグは、対立をあおる政治やニュース関連のコンテンツを減らし、親しい人同士の「意義ある交流」を促進することが目的だと語っていた。

だがWSJは、刷新にはもう1つの目的があったと指摘する。2017年に入ってから低下していたユーザーエンゲージメントを活性化させること(「いいね」やコメント、投稿を促すこと)だというのだ。

目的はどうあれ、この刷新はユーザー同士の分断を深めることがすぐに社内調査で明らかになった。投稿の共有を促す新アルゴリズムにより、怒りに満ちた、扇動的な投稿が広まりやすくなったのだ。

コンテンツ制作者やヨーロッパの政党からは、ネガティブな投稿がユーザー間に広く浸透しているという声が上がるようになった。社内のリサーチャーたちは、この有害な効果への対応策をいくつか進言した。

だがザッカーバーグはユーザーエンゲージメントの低下を恐れ、そのほとんどを採用しなかった。

進言された対応策の1つが、「ダウンストリームMSI」と呼ばれるアルゴリズムの機能の一部を弱めることだった。これはより多くの「いいね」やコメントをもらう可能性のある投稿を拡散させるもので、弱めた場合には誤情報の拡散を防げる可能性がある。

実際、エチオピアやミャンマーでこの変更は行われている。どちらもフェイスブックが民族間の暴力をたき付けていると批判された国だ。だがザッカーバーグは、これを他地域には適用しないと決めた。

ハウゲンのリークで注目された一件も似た経過をたどった。

WSJによれば、社内調査でインスタグラム利用者の10代女性の3人に1人が自分の体の尊厳を傷つけられ、メンタルヘルスを悪化させていた。ザッカーバーグはこの調査の社内プレゼンテーションを確認したのに、有効な対策を取らなかったようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物価目標の実現「着実に近づいている」、賃金上昇と価

ワールド

拙速な財政再建はかえって財政の持続可能性損なう=高

ビジネス

トヨタの11月世界販売2.2%減、11カ月ぶり前年

ビジネス

予算案規模、名目GDP比ほぼ変化なし 公債依存度低
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中