最新記事

SNS

フェイスブックに内部告発「ザッカーバーグが知っていたこと、やらなかったこと」

What Zuckerberg Knew

2021年10月11日(月)17時35分
アーロン・マク
フェイスブックの元社員フランシス・ハウゲン

米CBSテレビの番組でインタビューに応じるフェイスブックの元社員フランシス・ハウゲン(右) ROBERT FORTUNATO FOR CBS NEWSー60MINUTESーREUTERS

<分断をあおるメディアを放置してきたと元社員が告発。利益を優先し、ユーザーエンゲージメントの低下を恐れて改革を怠ったという。いま、フェイスブックが窮地に立っている>

ウオータースポーツを楽しむときに、なぜ顔が真っ白になるくらい日焼け止めを塗るのか──マーク・ザッカーバーグの最近のフェイスブックへの投稿は、そんなたわいないものばかりだった。

だが10月5日の夜、フェイスブックCEOのザッカーバーグは、1カ月ほど前から自社に巻き起こっていたスキャンダルにようやく言及した。

発端は9月。フェイスブックの元社員フランシス・ハウゲンによる、大量の内部文書のメディアや米議会関係者へのリークだ。

彼女は10月5日、米上院商業委員会の小委員会で証言。フェイスブックの内部調査で、インスタグラムが若いユーザー、特に10代の女性たちのメンタルヘルスや自分の体に関するイメージを悪化させ、アルゴリズムを使って対立的・扇動的なコンテンツを促進しているという結果が示されていたことを明かした。

ハウゲンの批判の中心は、フェイスブックが一貫してユーザーより自社の利益を優先しているというものだ。同社は自らの成長と、ユーザーの安全と幸福のどちらを優先するかという選択を迫られた場合、大抵は自社が儲かるほうを優先しているとハウゲンは主張した。

「フェイスブックの商品は子供たちに害を及ぼし、対立をあおり、この国の民主主義を弱体化させる」と、ハウゲンは言った。「同社幹部はフェイスブックやインスタグラムの安全性を高める方法を知っているのに、利益を優先して必要な改革を行っていない」

この日の夜、ザッカーバーグはフェイスブック上でこの指摘に反論。これまで安全性や透明性の向上に取り組み、自社の展開するプラットフォームがユーザーに及ぼす影響を調査してきたと投稿した。

ザッカーバーグは「ユーザーより利益を優先」というハウゲンの主張に、こう反論した。

「当社が利益を優先して、意図的に怒りをあおるコンテンツを作っているという主張は、全くばかげている。人を怒らせたり、気分を落ち込ませたりする商品をわざわざ作るテック企業などない」

確かに公開されている情報によれば、ザッカーバーグは利益を優先して「意図的に」有害コンテンツを促進しようとはしなかった。否定的な感情をあおるような商品を「わざわざ」作ってもいない。

軌道修正を怠ってきた

ハウゲンも、内部文書を報じたウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)も、ザッカーバーグは多くのケースで善意に基づいて判断を下してきたと評価する。ただそれが、意図したとおりに進まなかったとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵

ワールド

スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕 独検察 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中