最新記事

医療

これって適応障害?と思ったら──心療内科医が教えるストレス対処、自宅安静の過ごし方

2020年2月1日(土)17時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

治療と予防は「自分が自分の主治医になる」から

本書はまた、適応障害の対処法として、セルフコントロールを柱に据えている点も特徴のひとつだ。

特に外部要因と内部要因では、専門職の介入以上にセルフコントロールが重要だという。適応障害の治療と予防は「自分が自分の主治医になる」という気持ちを持つことから始まるのだ。

とはいえ、難しいことをする必要はない。いつもより少し早く寝る、週末に運動する、間食を控えるといった小さなことの積み重ねでいい。それは、自分の体調に常に気を配ることを意味する。

また、医療機関で適応障害と診断された場合には、自宅安静を指示されることが多い。ストレス源である職場から距離を置くためだが、ただ休めばいいというものではない。ダメージを受けた心が万全に回復する前に復帰すれば、すぐ悪化してまた休む、といったことを繰り返しかねない。

そこで、まずは思い切って長期間(最低でも1カ月)の休みを取ることを著者は勧めている。

ただし、事前に期間を決めると、復帰というゴールが精神的圧迫になるため、延長できることが大切だ。そして、休職期間を「ダラダラ期」「活動期」「復職期」に分け、順にステップを踏むよう指導する。

それぞれの段階には、やるべきこと、考えるべきこと、そして、やってはいけないことがある。例えば「ダラダラ期」は、その名のとおりダラダラする期間で、復職のことは考えてはいけない。職場に関するものを全てシャットアウトして、仕事に対して無責任になる必要がある。

「もしかして適応障害?」と思ったらまずすべきこと

著者によれば、適応障害は大昔からある病気で、人間が社会を形成するようになった頃からあるに違いないそうだ。

日本では、外交官から皇太子妃となった雅子皇后が適応障害と診断されたことで、広く認知されるようになったが、いまだに系統立てられた対処法はないという。

著者自身も、大学病院では巨大組織ゆえのストレスに苦しみ、先輩の精神科医に相談したが何の解決にもならなかったと述べている。そうした経験から、実際のストレスの現場に即した解決策や対処法を提案し、今まさに苦しんでいる人にすぐに役立つ内容となっている点も、本書の魅力だろう。

「もしかして適応障害?」と思ったなら、まずは本書にあるチェックリストに従って、自己診断してみるといいだろう。もしも適応障害だと判明しても、そのつらい時期を乗り越えるために知っておきたいことは、この本に詰まっている。


もしかして、適応障害?――会社で"壊れそう"と思ったら
 森下克也 著
 CCCメディアハウス

【参考記事】自分に自信がないのは克服できる、自分ひとりで(認知行動療法の手引き)

20200204issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年2月4日号(1月28日発売)は「私たちが日本の●●を好きな理由【中国人編】」特集。声優/和菓子職人/民宿女将/インフルエンサー/茶道家......。日本のカルチャーに惚れ込んだ中国人たちの知られざる物語から、日本と中国を見つめ直す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中