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1400年間の統計で地震予想 自宅にひまわり受信機買う男の「気象データ愛」

2020年1月30日(木)20時00分
高橋ホイコ(ライター) *東洋経済オンラインからの転載

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ひまわりの受信機を200万円で購入してしまうほど、気象データが好きだと言う山口さん(撮影:梅谷秀司)

──どうして、ひまわりの受信機を買おうと思ったんですか?

気象のデータが好きなんです。ひまわりもある意味データです。これを手元に置く方法はないかなと思っていたときに、たまたま広告を見つけたんです。まず資料を取り寄せて、かなり高いことがわかりました。それから頑張ってお金をためて。発注した後は、もうすごかったですよ。

メーカーの人にとってみれば、個人でこんなものを買う人がいること自体、ありえないんですよね。営業の人が接待してくれて。「個人で買ったのはあなたが2人目です」と言われました。

──そんな巨大な物を家に設置するなんて、家族に反対されませんでしたか?

気象や地震に関しては、こいつは異質だということを親は知っていたので理解してくれました。10年間、毎日気象観測をやっていましたから。雨量を測るバケツを外に置いて、雨が降ると夜中でもくみに行って何ミリ降ったとか記録する。気温計を外に置いといて、自動記録なんてできないので、寒い中それを読み取りに行く。あとは雪が降ったら積雪量を測るとか。

──数字というか、データに対して、尋常ではない熱意があるんですね。

家にも資料がいっぱいありますが、読み物はほとんどなくてデータばかりです。地震、台風、大雪などのニュース映像も残しています。30年分ぐらいあります。高校のときからそんなことをやってるんですよ。新聞は、1987年ぐらいから残っています。全部、いつか役に立つと思ってやっていたんです。ひまわりもそうです。ある意味、役に立ってよかったです。

仕事は楽しいし、ありがたい

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熊本地震では1度目の震度7の揺れあとも、強い地震への警戒を呼びかけていた(画像提供:ウェザーニューズ〔2016年4月15日深夜の放送より)

──その集めたコレクションというか資料は、いま、どう役立っていますか?

当時の報道を見ると、本やデータでは出てこない、もっと細かいところがわかります。当時の報道の仕方は、当時の社会の関心の持ち方そのものなんですよ。

阪神・淡路大震災のときだったら「南海トラフ地震の前兆か」とか、「高速道路が倒れたけど、ほかでは大丈夫なのか」とか報道されています。「復旧までどれくらいかかった」という情報も参考になります。当然、毎回同じになるわけではないですが、過去はこうでしたと話せます。

──特技を存分に生かせていますよね。やはり、仕事は楽しいですか?

楽しいです。楽しいとともに、ありがたいと思っています。いつも事あるごとに言うんですけど、この会社に入っていなかったら、ただの変わった人じゃないですか。本当に思うんですよ。あのとき、たまたまかけた1本の電話でウェザーニューズとの縁ができた。このことをすごくありがたいと思っています。

ウェザーニュースの2011年3月11日の放送は、今でもYouTubeで見ることができる。山口さんはその日、これから来る津波がどれだけ尋常ではないかを必死に説明していた。同規模の津波が来た例はそう多くなく、一例として1933(昭和8)年の昭和三陸津波を挙げていた。昭和8年が例に挙がるとなれば、多くの人の「いままで大丈夫だった経験」は役に立たないと直感的に理解できるだろう。災害が多いこの国で暮らす人間にとって、頼りになる存在だと感じた。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
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