最新記事

スペースビジネス

NASA有人飛行再開の鍵握る世界初の民間宇宙船 ボーイング・スペースXが熾烈な競争

2019年9月2日(月)11時37分

米テキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターに集められた経験豊富な宇宙飛行士とパイロット。米ボーイングが開発中の宇宙船「スターライナー」を使った国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行に向け、訓練を行っている。写真は7月に行われた水中訓練の様子(2019年 ロイター/Mike Blake)

米テキサス州ヒューストンのジョンソン宇宙センターに集められた経験豊富な宇宙飛行士とパイロット。米ボーイングが開発中の宇宙船「スターライナー」を使った国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行に向け、訓練を行っている。

将来的には一般客の宇宙旅行にも利用される計画のスターライナー。今月打ち上げられる予定だったが、技術的な問題や米航空宇宙局(NASA)上層部の人事異動が重なり、早くとも年末まで延期された。

NASAのスペースシャトル計画が2011年に終了して以降、初となる有人飛行の再開を巡っては、ボーイングのほか、米電気自動車テスラ創業者のイーロン・マスク氏率いる宇宙開発ベンチャー、スペースXが民間企業1番乗りを目指してしのぎを削っている。

最先端の技術を持つ両社は、今後成長が見込まれる世界の宇宙産業の中で最も成功に近い位置にいるとみられている。

NASAは近年、ISSへの人員輸送をロシアのロケットに頼ってきた。総工費1000億ドル(約10兆6000億円)のISSは、地上から400キロ上空を飛行しており、2000年11月以降、宇宙飛行士が交代しながら常時滞在している。

そこでNASAは、ISSへ宇宙飛行士を運ぶ有人カプセル搭載のロケット打ち上げシステムの開発を、スペースXとボーイングに計70億ドルで依頼した。

ロイターは、ジョンソン宇宙センターでISS行きに向けて訓練を行うNASAの宇宙飛行士ニコル・マン氏とマイク・フィンク氏、さらにボーイングの宇宙飛行士でテストパイロットのクリストファー・ファーガソン氏に、異例のインタビューを行った。

彼らはここで、宇宙空間で歩くための水中訓練や、ISSで緊急事態が起きた際の対応、フライトシミュレーターによるドッキングのトレーニングなどに取り組んでいる。

任務を率いるファーガソン氏

自動操縦システムを搭載したボーイングのCST-100スターライナーのプロジェクトを率いるのは、NASAの元宇宙飛行士で、退役米海軍大佐のファーガソン氏(57)だ。

「ボーイングは(宇宙船の)規模や動力の確保については理解していたが、内部や、自動操縦で動く機体と乗員とのインターフェイスについてはあまり考えていなかったようだ」

機内のデザインは簡素化が図られつつ、操縦士が現在地、目的地、その経路を把握したり、予期せぬ事態をどう立て直すか把握してしやすいよう、「大いなる妥協」を盛り込んだという。

2011年にスペースシャトル最後の飛行を率い、通算40日以上を宇宙で過ごしたファーガソン氏は、「結局のところは機体を見極めることに尽きる。変化球を投げてよこさないようにしておきたい」と話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NTT、発行済み株式の1.81%・2000億円を上

ビジネス

中国貿易統計、4月は輸出入ともに予想を大きく上回る

ワールド

米運輸長官、航空管制システム刷新へ支出要求方針 具

ビジネス

旭化成、今期1.5%の営業増益を予想 米関税影響「
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 10
    日本の「治安神話」崩壊...犯罪増加と「生き甲斐」ブ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中