カリフォルニアの「2045年ゼロカーボン電力」を阻む「これだけの課題」

California’s Green Dream

2025年1月23日(木)18時00分
ジェームズ・ビッカートン(本誌記者)

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電力供給の安定化を支えるバッテリーエネルギー貯蔵システムの建設予定地を訪ねるニューサム知事(23年5月) JOHN G. MABANGLOーPOOL/GETTY IMAGES

さらにカリフォルニア大学バークレー校のエネルギー・資源グループ(ERG)のフィリップ・ファニボンが指摘するように、同州は「インフラの老朽化、新たな需要の高まり、気候変動による自然災害」がもたらす「さまざまな難題」にも直面している。

1月7日にロサンゼルス近郊で発生した山火事も、20万人以上に避難命令が出されるなど被害は拡大。電気料金もハワイ州の次に高い。


州知事執務室の報道官は取材に対し、昨年10月30日に知事が電気料金上昇を防ぎ、その分を再生可能エネルギー利用者に還元する行政命令に署名したことに言及。ニューサムの就任以降、エネルギー貯蔵容量は17倍に増えたと強調した。

コストも手間もかかるが

環境団体エンバイロンメント・カリフォルニアのローラ・ディーハンと、クリーンエネルギー化を推進するNPOパーミット・パワーのニコラス・ジョセフォビッツは昨年10月、地元紙に寄稿。屋上太陽光発電パネル設置と貯蔵システムに関する規制をめぐる「承認と設置後の検査、住宅所有者組合の承認および電力系統連携と承認に時間がかかる煩雑なプロセス」を批判した。

こうした問題のせいで、時として承認プロセスのコストがパネル自体のコストを上回り、設置費用が大幅にかさむ。700社超が加入する企業団体カリフォルニア・ソーラー&ストレージ協会(CALSSA)は22年、この点も災いして同州の屋上太陽光発電システムのコストはヨーロッパの2倍だと報告している。

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