最新記事
建築

サステナブル建築を先導する世界の最先端モデルとは

Going Ultra-Sustainable

2023年10月13日(金)19時50分
デービッド・H・フリードマン(ジャーナリスト)

スマートでグリーンに

パワーハウス・ブラットルカイア 消費量以上に電力を生産

パワーハウス・ブラットルカイア、消費量以上に電力を生産する SNØHETTA

エレクロトニクスの頭脳は、新築でも既存の建物の更新でも、超サステナブル建築の実践にますます大きな役割を果たしている。多くのスマート・ビルディング・システムの中核を担うのは、人が建物内のどこにいて、どこにいないのかを追跡するセンサーだ。「冷暖房システムが4階に誰もいないことを察知すると、そこに送る冷暖房の空気や照明を大幅に減らす」と、スマート・ビルディング・システムを製造しているジョンソンコントロールズ社のケイティ・マッギンティCSO(チーフ・サステナビリティー・オフィサー)は言う。

「最近の自動車は、いわば車輪の上にコンピューターが載っているが、そうしたデジタル化は建物にはほとんど広まっていなかった」

スマート・ビルディングは送電網の価格変動を分単位で監視しながら、価格の変動を利用して冷暖房のタイミングを調整する。例えば、電気自動車を利用する居住者が増えたら、バッテリーに充電した電力を価格のピーク時に送電網に売り、価格が下がったときに再び充電するようなことも考えられると、マッギンティは言う。

敷地内に太陽光発電があれば、その電力も持続可能なシステムに取り入れることができる。晴天時に発電した電力の一部をバッテリーに蓄え、曇天時や価格が上昇したときにその電力を使用したり、送電網に売ったりする。

新築だけでなく改築の際にも、効率の高い太陽光パネルやヒートポンプ、断熱材を採用すれば、建物が消費する量以上の再生可能エネルギーを生成して、余剰分を外部に提供できる。既に多くのビルが余剰分を送電網に売って、再生可能エネルギー関連の目標達成を手助けしている。トロンハイムのパワーハウス・ブラットルカイアのように、近隣のビルや施設と再生可能エネルギーを直接、共有する契約を結ぶビルも増えている。

再生可能エネルギーのコストが下落し続けるなか、超サステナブル建築の実践があらゆる規模や予算のプロジェクトに浸透して、建物が気候変動にリンクする負債ではなく、資産になることが期待されている。


ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった...「ジャンクフードは食べてもよい」
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「豊尻」施術を無資格で行っていた「お尻レディ」に1…
  • 10
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中