突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘

2025年3月28日(金)14時17分
木野 太良 (カメラマン)*PRESIDENT Onlineからの転載

体重計の数字に見えない余計な脂肪まで落とす

それでも尿酸値対策(デトックス)生活の間中、精神的にはとても冴えていた気がする。それまで、消化に使っていたエネルギーは、きちんと脳にまで届くようになっていた。

体重計という見える数字では、余計な脂肪はついていないと思っていたが、それでも見えないところで、「余計な脂肪」がきっとついていたに違いない。それらさえ、ハードコアデトックス生活で、削がれていくようで一種の快楽があった。

老化とは、筋力などの体を駆動させる力にだけ、及ぶ訳ではないことがよくわかった。内臓ももちろん衰えていく。心臓も、肺も、肝臓も、腎臓も。


プリン体で痛めた僕の二つの腎臓には、しばらくハリが残ったが、それも次第に消えていった。

ただ、足先に残った激痛を起こしていた瘤の後だけが黒い斑点として残り続けた。これもまた僕の調べた情報によると、氾濫して結晶化した尿酸が完全に血中に溶けるまでには、最大で2年もの長い時間がかかるらしいのだ。

そうして迎えた3カ月後の検診で、僕の尿酸値は発症した時の8.4から5.4まで劇的に改善された。整形外科の先生は、「おーよく頑張ったね。えらいえらい」と褒めてくれた。「はい、必死でした」と僕。

流石にビールを解禁という気持ちにはなれないが、その晩は白ワインのボトルを開けて、壮絶に始まったハードコアデトックス生活に終止符を打ったのだった。

その後、徐々に肉を食べるようになり、午後3時のコーヒータイムにはケーキ類なども食するようになったのだが、レバー類とビールだけは、どうも「体」というよりも、脳味噌がいまだに拒否して口にしていない。

病気になるまで、正常に機能していた自分の身体のメカニズムを本当に知ることはない。知っていたとしてもそれが頭に入り、意識することはないだろう。バランスを崩し、病気になって初めて人は、自分の身体が巧妙に保っていたその奇跡的とも言っていいようなバランスを知ることになるのだ。

生活習慣病は恐ろしい。なぜならこの世の中は「毒」で満ち溢れているからだ。

自然から遠く離れた都市生活というのは、その便利さや経済合理性と引き換えに、人間をまるである種の家畜のように扱うシステムでもあるのだろう。

経済合理性により、マーケットの原理から設計され、僕らの健康を度外視した安価な飲料や、安価に設計された食べ物たち。そして僕らの脳みそをハックするために作られた、それらを宣伝する過大で妄想的な広告たち。

それらは僕らをすぐに殺すことはないにしろ、じわりじわりと僕らの身体と脳みそを中毒にして犯していくのだろう。

まじまじと未だ黒い斑点のようなものが残る、左足の痛風の跡を眺める。氾濫し猛威をふるった尿酸の瘤を、見つめてこんなふうにも思うのだった。

もっと大変なことにもなり得たかもしれないなと。

腎臓結石に脳溢血──。50代も近づく僕ら十二分のおじさんたちは、「放置した高尿酸値」という一つの疾患で、終いの道筋が見えてしまう年頃なのである。

氾濫したナイル川から、幾何学から地政学まで多くの叡智を得た古代エジプトの民のように、僕だってきっと氾濫した尿酸から賢くいろいろなことを学んでいけるはず。

身体とは本当に絶妙なバランスを保った有機的なブラックボックスなんだな。これからは、そのバランスを自ら意識して、ゆらゆらと揺れるその先の見えない綱をゆっくりと渡っていくのだ。


※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
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