最新記事
サイエンス

世界初「効果99%、副作用もない」男性用避妊薬が登場か

A PROMISING MALE PILL

2025年3月16日(日)15時10分
ジェス・トムソン(科学担当)
男性用経口避妊薬

待望の、ホルモンを含まない男性用経口避妊薬の臨床試験が進んでいる  New Africa-shutterstock

<現在臨床試験が進んでいる「YCT-529」は、生殖機能を維持しつつ精子の生成・放出を抑える待望の新薬>

世界初となる、ホルモンを含まない男性用経口避妊薬の臨床試験が進んでいる。「YCT-529」と呼ばれるこの新薬は米医薬品メーカーのユアチョイス・セラピューティクスが製造するもの。2023年12月からイギリス人男性16人が臨床試験に参加している。

YCT-529は、レチノイン酸(ビタミンAの一種)の受容体の作用を阻害することで、精子が生成されて放出されるのを防ぐ。ビタミンAの欠乏が不妊につながることはマウスやサル、ラットを対象にしたこれまでの研究で解明されている。


米ミネソタ大学薬学部の教授で、新薬の開発者の1人であるグンダ・ゲオルクは「研究者たちは長い間、ビタミンAが男性の生殖能力に不可欠であることは理解していた。YCT-529はレチノイン酸受容体アルファ(RARα)の阻害剤だ。RARαをブロックすることで、睾丸での精子細胞の生成と放出を阻止する」と本誌に語る。

「YCT-529はマウスの交配研究で99%の避妊効果があり、(元の状態に戻る)可逆性も示した。サルの研究でも精子数の可逆的な減少が見られた。マウスにもサルにも副作用は見られなかった」

課題だった副作用を抑制

さらにマウスでは、4〜6週間後に再び繁殖できるようになることが確認された。

キャリア
AI時代の転職こそ「人」の力を──テクノロジーと専門性を備えたLHHのコンサルティング
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米労働統計局、インフレ指標発表へ一時帰休職員が復帰

ワールド

イリノイ州への州兵派遣一時差し止め、シカゴ裁判所が

ワールド

訂正-米ニューヨーク州司法長官を起訴、金融詐欺の疑

ワールド

イスラエルとハマス、第1段階合意文書に署名 停戦・
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    50代女性の睡眠時間を奪うのは高校生の子どもの弁当…
  • 5
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 6
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 7
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 8
    米、ガザ戦争などの財政負担が300億ドルを突破──突出…
  • 9
    底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由─…
  • 10
    いよいよ現実のものになった、AIが人間の雇用を奪う…
  • 1
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 8
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 9
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 10
    更年期を快適に──筋トレで得られる心と体の4大効果
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 9
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中