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本当に大切なのは休肝日より「休脳日」...その二日酔い対策はむしろ危険!?

2024年5月10日(金)18時06分
吉本 尚(筑波大学准教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

【本当は脳を休ませることが大事】

脳の報酬系には多種類の神経伝達物質があり、それぞれが複雑に機能しています。少し専門的になりますが、飲酒量と脳内メカニズムの関係について、ショウジョウバエをモデルに行った東北大学の研究を紹介しましょう。

この研究では、アルコールを与え続けたハエと与えなかったハエを比較して、脳内のメカニズムを観察しました。アルコールを与え続けたハエは、脳内で快感を伝達する神経物質であるドーパミンの受容体が増加していたのです。

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『減酒セラピー』より

生物がアルコールを摂取することによって快く感じるのは、脳内の報酬系と呼ばれる神経系が活性化するためですが、この報酬系の中で中心的な役割を果たしているのがドーパミンです。

アルコールのみならず、麻薬や覚せい剤などの依存を形成する薬物にはドーパミンの放出や受容を活発にする作用があり、そのためこれらの摂取・使用が快感をもたらします。

この研究でアルコールを与え続けられたハエは、ドーパミン受容体の増加と同時に、アルコールに対する嗜好しこう性が高まりました。

つまり、脳の報酬系が乱れ、アルコールの摂取を好むようになったのです。人間もこれと同じです。お酒を飲み続けていると脳の報酬系が刺激され、ますますお酒が欲しくなります。

ですが、飲酒による刺激が途切れるとこの興奮が元に戻り、脳の報酬系は正常化します。週に1日か2日だけお酒を飲まないことで、脳への刺激をマイルドに保つことができるのです。

だから、肝臓を休ませる「休肝日」も大切ですが、お酒をおいしく飲み続けるために意識してほしいのは定期的に「脳を休ませる」こと。大切なのは「休脳日」なのです。

【どうすれば二日酔いは治るのか】

「お酒と一緒に水を飲むと、アルコールの分解が速くなる」。お酒の場で、よく聞くフレーズではないでしょうか。ところがこれは誤解です。

減酒の面からいって、お酒と一緒に水を飲むこと自体はおすすめです。確かに、飲んだ水の分、お酒の総量を減らしやすくなります。脱水症状を防ぐこともできます。しかし、水がアルコールの分解を助けるわけではないのです。

飲んだ翌朝、起きられない、頭が痛い、吐きそう。飲む量をセーブできないと二日酔いに襲われます。飲み過ぎれば、いくら水を飲んだところでお酒は体に残ってしまいます。血中に溶けたアルコールの代謝は、主に肝臓で行われます。

アルコールが体外に排出されるまでの時間の目安は、ビール缶1本(500ml)、焼酎グラス1杯(150ml)、日本酒1合(180ml)は約4~5時間。ワイングラス1杯(100ml)は約2時間。ウイスキーならロックでグラス1杯(150ml)は約8時間と言われています。

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『減酒セラピー』より

ただしこれらは体重60kgの人を基準とした数値です。アルコールが抜ける時間は、飲んだお酒の種類と体内でアルコールを分解する能力によって違ってくるのです。

翌日に響かないよう、対策をしているという方も少なくないでしょう。たとえば、飲んだ後にサウナで汗をかく。翌朝、お風呂で湯舟に浸かる、必ずランニングをする。

残念ながらこれらも俗説で、効果は期待できません。脱水症状や心臓への負担などを考えると、むしろ危険です。

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