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本当に大切なのは休肝日より「休脳日」...その二日酔い対策はむしろ危険!?

2024年5月10日(金)18時06分
吉本 尚(筑波大学准教授) *PRESIDENT Onlineからの転載

【「少し飲んだほうが長生き」は幻想】

そんな中、2018年、世界的医学雑誌ランセットに、新たな研究が発表されます。この研究によって、純アルコール量10g(ワイングラス1杯程度)くらいまでは疾患リスクの上昇はあるものの緩やかで、それより量が増えると疾患リスクは上昇傾向を示すことが明確になりました。

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『減酒セラピー』より

図表1のように、以前はグラフの形がアルファベットのJに似ていることから、少量の飲酒が体に良いことを「Jカーブ効果」と呼びましたが、今はこのような形にはなりません。

つまり、「少し飲んだほうが長生き」のJカーブは幻想で、「健康で長生きしたいなら、お酒は少量。ベストはゼロ」ということです。

【なぜ休肝日が必要なのか】

お酒を減らすというと、すぐに思い浮かぶのが「休肝日」でしょう。多くの方が、健康診断の肝臓に関する数値を気にしながら飲んでいます。

肝臓の解毒作用に関与するγ-GTPの値が正常範囲なら、「肝臓は元気なんだからこのまま飲み続けても大丈夫♪」「数値が悪くないならお酒を減らさなくてもいいんじゃない?」と一喜一憂しています。

長い飲酒習慣の中で「だんだん酒量が増えてきた」というのは、脳の報酬系が「もっと! もっと!」と刺激を求めることによって起きた現象と考えるのが妥当です。

あるいは、迎え酒のように「飲まないと気持ち悪いので飲む」というのも、アルコールの刺激が切れてしまったために起こる感覚です。

お酒を飲むと気持ち悪さがすっと解消されるので、また飲む。この状態になると、かなりアルコールに対する依存性が高い状態と言えます。

実は、肝臓はもともと修復機能が高い臓器で、毎日飲酒していても少量であればそれほど傷むわけではありません。ではなぜ、週に1日か2日、お酒を飲まない日を作ることが大事なのでしょう。

お酒を毎日飲んでいると、脳の報酬系と呼ばれる神経系が刺激されます。飲酒でこの報酬系が満たされると、「楽しい」「気持ちいい」「幸せだ」といった感覚が引き起こされます。すると脳はしだいにこの感覚を記憶し、もっと刺激を求めるようになるのです。

長い飲酒習慣の中で「だんだん酒量が増えてきた」というのは、脳の報酬系が「もっと! もっと!」と刺激を求めることによって起きた現象と考えるのが妥当です。

あるいは、迎え酒のように「飲まないと気持ち悪いので飲む」というのも、アルコールの刺激が切れてしまったために起こる感覚です。お酒を飲むと気持ち悪さがすっと解消されるので、また飲む。この状態になると、かなりアルコールに対する依存性が高い状態と言えます。

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