最新記事
ヘルス

ステージ4のがんが劇的寛解 ストレスや怖れから解放されると治癒能力が高まる

2023年12月4日(月)19時42分
ケリー・ターナー(がん研究者) *PRESIDENT Onlineからの転載

*写真はイメージです Tyler Olson - shutterstock


全米で23万部のベストセラー本を著したがん研究者ケリー・ターナー氏は、がんが劇的に寛解した1500以上の症例を分析。世界中の数百人ものがんサバイバーたちにインタビューした結果、奇跡的な回復を遂げた患者たちには、ある共通点があることがわかった。そのうちの一つが、「抑圧された感情を解放すること」だった――。

※本稿は、ケリー・ターナー『がんが自然に治る10の習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

ストレスや怖れを解放すると治癒能力は高まる

ストレスは、がん細胞を発見して体外に排出する役割を担う免疫システムを弱めることが、研究によって繰り返し証明されています。ストレスは免疫細胞だけでなく、体内のあらゆる細胞に悪影響をおよぼします。

幸いなことに、ストレスや怒り、怖れなどの感情を解放すると免疫システムが強化されることが何百もの研究により示されています。したがって、健康上の危機の際にストレスを制御する方法を見つけることは、劇的寛解者にとって不可欠なステップになるのです。

ストレスと同様に、怖れもまた、免疫システムを弱めたり、「硬直」させたりする感情の一つです。がん診断の重大さを考えると、劇的寛解を果たした人たちの間で、怖れが最も抑圧される感情の一つなのは驚くことではありません。とくに死への怖れは、がんと診断された瞬間から、患者に迫ってきます。

怖れに向き合うことは必ずしも簡単なことではありません。療法士や劇的寛解者たちは、怖れを抱き続けると身体が「締め付けられる」ようになり、エネルギーが滞る一方で、怖れは身体のバランスを取り戻すのに役立つという点で一致しています。

ストレスや怖れといった感情を十分に感じ、それを完全に解放することで身体はリラックスし、免疫システムの治癒能力が高まります。劇的寛解者の多くは、それを滝の下に立っているようなものだとたとえます。

感情というものは、状況に応じて降りかかってきますが、やがてそれは流れ出てあなたから去っていきます。もしあなたがいつも「感情の滝」の下に立っているとしたら、それは人生とそのすべての感情を最大限に感じながら、どんな感情的な荷物も溜め込まないということを意味します。そうすることで、過去にとらわれずに、今この瞬間にどんな感情も経験することができるようになるのです。

怖れは免疫システムを抑制してしまう

ここ数年、抑圧された感情を解放することの価値が、私たちの集団意識の最前線に浮上してきました。自分の感情についてほかの人と話し合ったり、そうした感情とうまく付き合う新しい方法を見つけることが、ますます受け入れられるようになってきています。

近年、注目を集めているのは、恐怖やトラウマに対するより深い理解、自己愛の重要性、そして未解決のトラウマから救うためのツールとして、身体を軽く叩くタッピングと、EMDR(眼球運動による脱感作・再処理法)の二つが出現したことです。

怖れを感じるたびに、自己治癒力のメカニズムがオフになります。怖れのようなストレスの多い感情は、体内でストレス反応を引き起こし、闘争・逃走モードに入り、免疫システムを抑制してしまいます。私の友人で同僚のリサ・ランキン医学博士は、ニューヨークタイムズのベストセラー『Mind Over Medicine』と『The Fear Cure』の著者ですが、病気における怖れの役割について話すことをためらいません。

「健康で長生きしたいのであれば、何を食べるか、運動するかどうか、ビタミンをどれだけ摂るか、悪い習慣をどれだけ持っているかよりも、怖れに対処することのほうが間違いなく重要です。多くの病気の根源に、抑制されていない怖れがある可能性を示唆するのは極端だとは理解しています。

これらの病気に生化学的な原因がないと言っているわけではありませんが、怖れは生化学的に有害な影響を受けやすくして、身体の自然な自己回復のメカニズムを不活性化させることを示唆しているのです。

さらに重要なのは、これについてあなたには何かできることがあるという点です。怖れと正しい関係を築くには、怖れと仲よくなり、怖れに関心を持ち、全身を乗っ取られることなく怖れに耳を傾ける必要があります。

そして、怖れている部分を落ち着かせることで、ストレスホルモンが消散され、癒やしホルモンである親密さの生化学的スープが劇的寛解を可能にするためのホルモンの舞台を整えるのです」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 9
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 10
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中