最新記事

ライフスタイル

「奨学金880万円」借りて大学進学した彼女が東京で見つけた仕事とは

2022年2月6日(日)08時18分
千駄木 雄大(編集者/ライター) *東洋経済オンラインからの転載

その後、大学を卒業した志保さんは、1社を経て現在も勤務する会社に中途で入社することになる。名画座通いをしていたことを考えると、映画会社なども志望しそうだが......尋ねると、「一時期考えていたこともありましたけど、やめたんです」とのこと。

「大学時代はひとりでいることも多くて、そのせいか、鬱っぽくなった時期もあったんです。そんな時、自分を支えてくれたのが本でした。映画よりも、寄り添ってくれている感じがしたんです。だから、本に関わる仕事がしたいと思うようになって。

あと、友人の誘いで、映画作りに関わったことも影響しています。映画はひとりで見られるけど、作るのは大人数じゃないですか。だから、『自分には合わないな』って気づいたんです。今までに触れてきた数は映画のほうが多かったけど、仕事にしたいな、できそうだなと思ったのは本だったというか。自分としても、意外な発見でしたね」

そんな、本に関わる現在の日々は、給料こそ、そこまで高くはないものの、「それでも今の仕事は楽しいです」とのことだ。

「高校生までは将来のことなんて、何にも考えていませんでした。でも、東京の大学に来たことで、今の仕事につきたいと思うようになった。ずっと地元に住んでいたら、名画座通いも出版社でのバイトも自主映画製作の手伝いもできなかっただろうし、そうなると、今の仕事も浮かばなかっただろうなって。選択肢が増えたという意味では、奨学金もらっておいてよかったなとは思います」

地元を出て、東京の大学に進学したことによって、自分のやりたいことを発見し、今はやりたかった仕事をしている。それは、奨学金を借りたことでかなったといっても過言ではないだろう。

金銭感覚に変化はあった?

もっとも、そんな"美談"めいた話は、奨学金返済にはなんら関係のない事情である。媒体特性上、大人の読者が多いことは理解しつつ、本連載は「高校生が参考にできる、リアルな事例を積み上げる」ことを目的のひとつとしているので、あえてねちっこく、お金の部分に切り込んでいきたい。

まず現在、志保さんは毎月約3万7000円を返済している。結果、社会人生活のなかで返済に困ることもあったようだ。

「今は給料も上がったので『月々4万円弱の出費はデカいけど、思ったより大丈夫』という感じです。ただ社会人1年目のときは、給料もそんなにもらえていなかったので『デカい出費だな』と思っていましたね」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、ダウ249ドル安 トランプ関税

ワールド

トランプ氏、シカゴへの州兵派遣「権限ある」 知事は

ビジネス

NY外為市場=円と英ポンドに売り、財政懸念背景

ワールド

米軍、カリブ海でベネズエラ船を攻撃 違法薬物積載=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 3
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 4
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 5
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 6
    トレーニング継続率は7倍に...運動を「サボりたい」…
  • 7
    トランプ関税2審も違法判断、 「自爆災害」とクルー…
  • 8
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    世界でも珍しい「日本の水泳授業」、消滅の危機にあ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ女性が目にした光景が「酷すぎる」とSNS震撼、大論争に
  • 4
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 5
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 6
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 7
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 8
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 9
    「人類初のパンデミック」の謎がついに解明...1500年…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中