最新記事

ヘルス

あなたがダイエットに失敗するのは内臓脂肪を燃やす栄養素を制限しているから

2021年6月20日(日)20時00分
水野雅登(医師) *PRESIDENT Onlineからの転載

③植物性信仰などの対策間違い

外来などで「鉄不足です」とお話しすると、「ほうれん草を食べればいいんですね」という言葉がよく返ってきます。これは日本人によくある反応でしょう。

確かに、ほうれん草には鉄が含まれていますが、これは植物性の鉄であって、動物性の鉄とは違う構造をしています。そのため吸収率は、動物性の鉄の「5分の1以下」に過ぎず、ほうれん草を食べるだけではとても十分な量をとることはできません。

それ以外の食物でも、含まれている鉄の量を考えると、食事から鉄不足を解消するだけの鉄を摂取することは現実的ではありません。

④日本の鉄サプリの問題

食べ物で鉄不足を解消できないとしたら、現実的にはサプリメントしか選択肢がなくなります。ところが、日本で流通している鉄サプリは「ヘム鉄」と呼ばれる鉄が含まれているのですが、胃腸にはやさしいものの、鉄の含有量が少ないというデメリットがあります。

ヘム鉄サプリメントを何年も飲み続けたのに、鉄不足がまったく改善しなかった症例を、実際に何例も診ました。そのため、ヘム鉄はその量の少なさから、私は鉄不足の解消にはほぼ結びつかないと考えています。

⑤母親ゆずりの鉄不足

日本のこの状況下の中では、当然ながら、子どもを産む母親のほとんどが鉄不足になっています。母親が鉄不足でも、母体から鉄をどんどん削り取って、子どもへ鉄を与えるように人間の体はできています。

しかしながら、それも限界があります。母体の鉄が枯渇すれば、子どもは当然ながら鉄不足になってしまいます。場合によっては「胎児からずっと鉄不足」ということも、十分にあり得るのです。

脂肪燃焼の不具合③:ビタミン不足

内臓脂肪がたっぷりとついている人ほど、タンパク質や鉄はもちろんのこと、ビタミン不足が顕著です。健全な代謝を支えるビタミンがないということは、当然ながら、体が脂肪を燃やす力も非常に脆弱になります。

現代日本の「普通の食事」は、「三食キッチリ主食をとる」というものです。

消費者庁の認可している「トクホ(特定保健用食品)」にも、「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを」という表示が義務付けられているのが、象徴的です。このような「糖質盛りだくさん」の食事では、その他の各種栄養素が必然的に不足してしまいます。

まず、ビタミンB群とCは水溶性ビタミンのため、体内に蓄えることができません。ほかの脂溶性ビタミンは体脂肪に蓄えることができますが、B群やCの場合は、一生懸命とっても、使えない分はそのまま尿に出ていってしまいます。

栄養剤や栄養ドリンクなどを飲んだ後に、尿の色が黄色くなっているのを見たことがある人は多いでしょう。あれはビタミンB2の色なのです。ビタミン摂取の上級者になると、この尿の黄色の程度をチェックすることで、摂取したビタミンB群が効いているかどうかを判断する人もいます。

まずは、この不足しがちなビタミンB群とビタミンCを積極的にとることが、脂肪燃焼体質へ近づくためのスタートラインです。しかも、蓄えることができない栄養素ですから、毎日の摂取が必要です。

脂肪燃焼の不具合④:ミネラル不足

先に指摘した鉄以外にも、さまざまなミネラル不足が起きています。

とくに不足するものが「Mg(マグネシウム)」と「Zn(亜鉛=英語でZinc)」の2つです。タンパク質や鉄と同じく、ほとんどの日本人に不足しているといっていいでしょう。

この2つのミネラルは、脂肪を燃焼してエネルギーを生み出す回路を動かすうえで欠かせないものです。不足すると脂肪燃焼が停滞してしまいます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 5
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中