実話とは思えない...水深91mの海底からの救出劇『ラスト・ブレス』が描く「絶対に諦めない男」の狂気
In at the Deep End

映画『ラスト・ブレス』潜水士の救出を誓うダンカン FOCUS FEATURES
<刻々と迫り来る命の期限に挑んだ男たち。撮影も命がけ。潜水中の俳優の機材が故障するトラブルも──(ネタバレなし・レビュー)>
あまりに現実離れしていてとても実話とは思えない──アレックス・パーキンソン監督(Alex Parkinson)の映画『ラスト・ブレス(Last Breath)』もそんな物語の1つだ。あるプロの潜水士の身に実際に起きた出来事に基づいている。
舞台は水深91メートルの海底。潜水士たちがガス・パイプラインの補修作業を行っている最中に、潜水支援船にトラブルが発生する。それが原因で若き潜水士クリス・レモンズ(Chris Lemons)の命綱が切れ、船からの酸素供給も断たれてしまう。緊急用ボンベの酸素は10分しかもたない。
「いつもの仕事」が時間やテクノロジー、人間の持久力との闘いと化す。
主要キャストはクリス役にフィン・コール(Finn Cole)、彼と共に海底で作業に当たるデイブ・ユアサ役にシム・リウ(Simu Liu)。
2人の作業を潜水鐘(潜水士を深海に運ぶための加圧カプセル)から見守るベテラン潜水士ダンカン・オールコック役にウディ・ハレルソン(Woody Harrelson)。3人は迫真の演技で、危険で孤立した深海での長時間作業を可能にする飽和潜水の世界に観客を引き込む。
パーキンソンは自ら手がけた2019年の同名ドキュメンタリーを徹底的に練り直し、臨場感あふれるサスペンススリラーに仕上げている。