最新記事
追悼

映画界への恩返しに生きた、ロバート・レッドフォードの89年...世界が恋した「二枚目」の死を悼む

Not Just a Pretty Face

2025年9月23日(火)09時25分
ダリル・スパークス(豪サザンクイーンズランド大学上級講師)
レッドフォードの名を世界に知らしめた『明日に向って撃て!』

レッドフォード(右)の名を世界に知らしめた『明日に向って撃て!』 ©1969 2OTH CENTURY FOXーMPTVーREUTERS

<俳優、監督、育成者として、映画界にとびきりの恩返しをした人格者だった>

ハリウッドはルックスがものをいう場所だ。エロール・フリンもジェームズ・ディーンもブラッド・ピットも、その美貌でチャンスをつかんだ。

そんな二枚目スターの代表格ロバート・レッドフォードが9月16日、89歳で死去した。

ルックスがものをいうとはいえ、顔だけで成功が約束されるわけではない。世界で人の心をつかむには実力も優れた人格も必要だ。その全てをレッドフォードは備えていた。


最初から順調だったわけではない。10代で母を亡くし、大学を中退したレッドフォードは演技の道を志し、1959年に23歳でブロードウェイの舞台を踏んだ。

初めて出た映画は60年の『のっぽ物語』。端役だったが、現場で出会ったジェーン・フォンダとの間には生涯続く友情が芽生えた。フォンダは2015年、「ずっとロバートに恋をしていた」と公の場で明かしている。

才能を認められるのに時間はかからなかった。62年のテレビ映画『ボイス・オブ・チャーリー・ポント』でエミー賞の候補になり、売れっ子に。大きな役が舞い込み、『サンセット物語』にフォンダ共演の『裸足で散歩』など、その多くがラブロマンスだった。

だがイケメンすぎが災いし『卒業』の主演を逃したこともあって、レッドフォードはより多様な役を模索し始めた。

そして69年、映画史に残る名コンビを生んだ『明日に向って撃て!』が公開。ポール・ニューマン共演の傑作で、レッドフォードはスーパースターの座に駆け上がった。

レッドフォードが演じた無法者サンダンス・キッドはとにかくセクシーだった。10代の若者は男も女も部屋に映画のポスターを貼り、世界がレッドフォードに恋をした。

若手監督の育成に貢献

かくして快進撃が開始。『追憶』、再びニューマンと組んだ『スティング』に『華麗なるギャツビー』と、ヒットを連発した。

76年には再び最高の当たり役に巡り合った。

ダスティン・ホフマン共演の『大統領の陰謀』で、ウォーターゲート事件に迫った実在の記者ボブ・ウッドワードを演じたのだ。演技派の誉れ高いホフマンもこのときばかりはかすんで見えたほどで、レッドフォードがアカデミー賞にノミネートされなかったのは理不尽としか言えない。

【動画】映画『大統領の陰謀』予告編(1976年) を見る

監督業にも進出し初めてメガホンを取った80年の『普通の人々』がアカデミー賞で作品賞をはじめ4部門を制した。その後も『リバー・ランズ・スルー・イット』や『クイズ・ショウ』を世に問うた。

スクリーンの外では先住民や性的マイノリティーの権利向上に尽力した。しかし最大の功績は映画作家を育成する非営利団体サンダンス・インスティテュートとサンダンス映画祭の設立だろう。クエンティン・タランティーノやポール・トーマス・アンダーソンら多くの監督が、この映画祭から羽ばたいたのだ。

レッドフォードの軌跡を振り返ると分かることが1つある。彼は美貌で成功の扉を開けたかもしれないが、扉を60年以上開けておくことができたのは才能と献身のおかげだ。

俳優として監督として、レッドフォードは映画界に多大な恩返しをした。決してただの二枚目ではなかったのだ。

The Conversation

Daryl Sparkes, Senior Lecturer, Media Studies and Production, University of Southern Queensland

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.

地方自治体
人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に安心な水にアクセスできる社会の実現へ
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:中東の高級車市場に戦火の影響、金箔仕上げ

ビジネス

中東情勢、5月までに終結なら影響限定 年末株価6万

ビジネス

日銀短観、景気は緩やかに回復・中東情勢の影響注視と

ビジネス

午前の日経平均は大幅反発、5万3000円回復 中東
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引、インサイダー疑惑が市場に波紋
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経…
  • 7
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 8
    韓国・週4.5日労働制が問いかけるもの ──「月曜病」解…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中