偉大な小説は最初のページで分かる――ダガー賞受賞『ババヤガの夜』翻訳者が語る舞台裏
BLURRING THE LINES OF MYTH
ユーモアあり惨劇あり愛あり復讐あり変身あり、壮大な物語の特徴が揃っている。200ページに満たない小説に、お楽しみがこれでもかと詰まっている。
作家の仕事と翻訳者の役割
多くの意味で愛すべき小説だが、商業的成功を収めた理由を特定するのは無謀だろう。世間の評判は作者がコントロールできる範囲をはるかに超えているし、出版社のプロモーションには限界がある。
翻訳は本に特別な「第2のチャンス」を与える。本質を変えることなく、新しい命を吹き込む。翻訳は再生の芸術なのだから。
言葉を選んでストーリーを形作るのが作家の仕事だとしたら、作家が下した選択を土台に、さらに徹底して言葉を選ぶのが翻訳者の仕事。作家、出版社、翻訳者として私たちにできるのは、これはと思う本に賭けることだけだ。
英語版が国外で賞を受賞していなければ、『ババヤガの夜』の歩みはかなり違っていただろう。だが賞を取らなければ、本の価値は下がるのか。商業的な意味ではそうかもしれない。
しかしストーリーテリングの巧みさや楽しさという点では、読者の手に届くのは同じ本のはずだ。それは異なる読者に向けた異なる言語であったとしても。





