約558億円で「過去の自分」を取り戻す...テイラー・スウィフト「原盤権」をめぐる6年の闘いに幕
A Taylor’s Victory
スウィフトは「莫大な数のファンと強力な信頼関係を築いており、他のアーティストや企業や投資家にはできない方法で、初期の6枚のアルバムへの関心を高めることができるだろう」と、ミラーは言う。「やはり再録版より原盤のほうが愛されているしね」
オレゴン大学のドリュー・ノビル准教授は「スウィフトの楽曲はストリーミングだけで年間1億ドル以上を生み出している」と言う。「6枚の原盤権を手に入れたことで、この金額はさらに増えるだろう」
業界の権利関係に一石
これまでスウィフトの訴えを聞き入れて、原盤を聴くことを避けてきた熱心なファンが「気兼ねなく原盤を聴けるようになったことから、原盤権の価値は(今回の取得価格である)3億6000万ドルよりも高くなっているかもしれない」と、ノビルは言う。
だが、スウィフトにとって今回の原盤権取得は、金銭的な収入が増えることよりも、「アーティストとしてもっと象徴的な意味合いがある」と、バークリー音楽院のジョー・ベネット教授は指摘する。
「スウィフトはいつも目標に向けて長期戦をしてきた。また、ビジネス上のあらゆる決断が、ファンやメディア、そして音楽業界の厳しい批判の目にさらされることを十分理解している。今回の件で重要なのは、資産としてだけでなく、アーティストが自分の作品を自分で所有し管理する権利を持つことだ」と、ベネットは言う。「アーティストとレーベルの関係に新たな前例を作ったと言えるだろう」