最新記事
映画

救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フローレンス・ピュー主演の新作は「あまりにも保守的」

Death by Heterosexuality

2025年6月6日(金)18時17分
リッチ・ジャズウィアック(ライター、スレート誌人生相談員)

性別役割にはひねりがあるものの、これがわざとらしい。アルムートが一流シェフとして活躍する一方で、食品会社に務めるトビアスのキャリアは添え物。またトビアスは涙もろく、中盤はほぼ全てのシーンで目に涙をためている。

『この時を生きて』は、何十年か前の映画を見ている気分にさせられる作品だ。「純愛」の描き方はこれこそが正しい恋愛だと訴えているようで、誤解を招く。型破りに見えて、実際には伝統的、いや保守的な映画なのだ。


一風変わったなれそめにも、既視感がある。トビアスは夜中にバスローブを着ただけの格好でコンビニに出かけ、車にはねられる。病院で意識が戻ると向かいに見知らぬ女が座っていて、「私がはねたの」と告白する。それがアルムートだ。

笑いを取ろうとする試みは滑りがちで、全体の悲劇的なトーンから浮いている。

産気づいたアルムートを車に乗せ、トビアスは病院に急ぐが道路は大渋滞。2人は車を降りてガソリンスタンドで買い物をし、そのトイレでアルムートは出産する。やがて救急車で走り去る親子を見て、観客は首をかしげるしかない。「車はどうするの?」

前後にぴっちり縦列駐車した車の間からトビアスが愛車を出そうとする場面は、『オースティン・パワーズ(Austin Powers)』を思わせるどたばたコントだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、反ファシスト運動「アンティファ」をテロ

ビジネス

機械受注7月は4.6%減、2カ月ぶりマイナス 基調

ワールド

ロシア軍は全戦線で前進、兵站中心地で最も激しい戦闘

ワールド

シリア、イスラエルとの安保協議「数日中」に成果も=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中