救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フローレンス・ピュー主演の新作は「あまりにも保守的」
Death by Heterosexuality
もっとも、主演の2人は素晴らしい。
セックスシーンはどれも盛り上がる前にカットされるので、燃えるような情熱は感じられない。それでも2人の演技からは愛がリアルに伝わる。アルムートに「子供は要らない」と言われて軽く顔をしかめる場面など、ガーフィールドは無言の演技が光る。
だがうわべの進歩的な理念と根底に潜む硬直した伝統主義のはざまで、映画は右往左往する。センチメンタルなお涙頂戴ものとしても生ぬるい。
時系列がせわしなく切り替わる編集も、中途半端さを助長する。2人が娘のエラにアルムートの病気を説明しようとするシーンでは、肝心の説明も娘の反応も見せないまま次の場面に移ってしまう。
ヒロインの行動が不可解
終盤で、アルムートは世界最高峰の料理コンクール「ボキューズ・ドール(Bocuse d'or)」に向け特訓してきたことを打ち明ける。欧州予選は自分の結婚式の当日。「ただの『死んだママ』になるのは嫌」と彼女は言い、コンクールを選ぶ。娘にポジティブな記憶を残したいのだ。
だからこそ、その後の行動が解せない。予選に出場して料理を完成させたアルムートは、結果発表を待たずにコック帽を脱ぎ、会場を去る。観覧席にいた夫と娘を連れて向かった先はスケートリンク。前半で明かされているのだが、アルムートはかつてフィギュアスケートの選手だった。