最新記事
BOOKS

【大河「べらぼう」】江戸の基礎知識 「錦絵」はアイドルのブロマイド!?

2025年2月3日(月)11時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

桃源郷・新吉原の流行を伝えた美人画

急速に都市整備が行われた江戸において、公許の遊郭である吉原が誕生したのは、1617(元和3)年のことである。江戸の中心部である日本橋富沢町(現在の日本橋人形町)に置かれたが、1657(明暦3)年の明暦の大火によって焼失してしまう。時の幕府としても、江戸の中心部に遊廓があることを不適当と考え、吉原を浅草へと移動させた。これにより、日本橋時代を「元吉原」、浅草移転以降を「新吉原」という。

newsweekjp20250129064444-55134823e4903661154a215b0fa6b51180ac7453.jpg

「青楼二階之図(せいろうにかいのず) 歌川国貞画 1813(文化10)年 国立国会図書館蔵

日本全国には、京都の島原遊廓をはじめ、吉原以外にも公許の遊郭があった。それ以外にも非合法で安価な私娼が営業する岡場所も江戸の各地に存在したが、そうした遊び場のなかでも吉原は畑のなかにつくられた人工の町であり、巧みにその閉ざされた世界を演出した劇的な空間であった。

碁盤の目のような吉原の目抜き通りである仲之町通りには植え込みが設けられ、3月3日の節句には、そのためだけに桜の木が運び込まれ、花見の名所に変わる。

また、旧暦8月1日から、30日間にわたって行われる「俄(にわか)」では、山車(だし)が現れる。2階立ての山車には、吉原芸者たちが乗り込み、演奏や踊りを担う。吉原の一大パレードである。

こうした非日常の空間を目当てに、多くの文化人が集まり、そのなかから新しい文化・流行が誕生していった。遊女が着る着物や髪型、装飾品などは浮世絵(美人画)のなかで表現され、吉原の内外で流通し話題を呼んだ。しかし、他方で吉原の華やかな世界の裏で、そこで働く遊女たちの過酷な生活があったことも事実である。

newsweekjp20241001115047-ee86b8473e023f94c5bb356eb9d63c033a7c24e8.jpg
Pen BOOKS 蔦屋重三郎とその時代。
 ペン編集部[編]
 CCCメディアハウス[刊]

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)


newsweekjp20241001110840-52d8ba4d464f051b147f072154166ed910f7d37d.jpg

newsweekjp20241001110900-d17961cf9be794dc02a88e04cb4a7558dd610fb8.jpg

ニューズウィーク日本版 台湾有事 そのとき世界は、日本は
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月26日号(8月19日発売)は「台湾有事 そのとき世界は、日本は」特集。中国の圧力とアメリカの「変心」に強まる台湾の危機感。東アジア最大のリスクを考える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

訂正-米利下げ、差し迫っていない 現在のデータは根

ワールド

イスラエル首相、ガザ停戦交渉開始を指示 人質解放と

ビジネス

米中古住宅販売、7月は2%増の401万戸 予想上回

ワールド

米司法省、クックFRB理事を調査へ パウエル議長に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精神病」だと気づいた「驚きのきっかけ」とは?
  • 2
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自然に近い」と開発企業
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 5
    夏の終わりに襲い掛かる「8月病」...心理学のプロが…
  • 6
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 7
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医…
  • 8
    米軍が長崎への原爆投下を急いだ理由と、幻の「飢餓…
  • 9
    ドンバスをロシアに譲れ、と言うトランプがわかって…
  • 10
    フジテレビ、「ダルトンとの戦い」で露呈した「世界…
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 5
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 6
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 9
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 10
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中