最新記事
歴史

半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?

2024年12月9日(月)11時11分
磯田 道史 (歴史家) *PRESIDENT Onlineからの転載
半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達した江戸の吉原・京の島原と並ぶ歓楽街はどこにあった?

木曽路の長野県奈良井宿 Venus.1777 - shutterstock-

<家賃は月4875円、銭湯代は98円...その日暮らしの江戸っ子が唯一お金をかけた「一生に一度の大イベント」とは?>

江戸時代、人口100万人を超えた大都市・江戸。風呂場のない狭い長屋に暮らす町人たちは、毎日湯屋に通うほどの風呂好きだったという。

歴史学者・磯田道史さん監修の『新版 江戸の家計簿』(宝島社)より、一部を紹介する――。


1K、9平米の家賃は月4875円だった

徳川家康は江戸の町を、城を中心に武家地、寺社地、町人地の3つに分けた。城の周囲にはそれを守る武士を住まわせ、この武家地を取り囲むように寺や神社を配置した。

町人地は今の中央区、台東区、千代田区の一部だった。京間60間(約120m)四方の町割がされ、町割の通りに面した町屋(長屋)を表店、裏に並んだ町屋を裏店と呼んだ。表通りには大店や一戸建ての商家が軒を連ね、路地を入ったところには裏店があった。

多くが棟割長屋で、最小のものが、間口が9尺(約2.7m)、奥行きが2間(約3.6m)、面積約9.72m²の、いわゆる「九尺二間の棟割長屋」である。路地に面した3尺(約90cm)幅の腰高障子が入り口で、入ると土間があり、水がめや流し、かまどがある。奥には4畳余りの居間兼寝室という1K。家賃は現代感覚で算出すると、ひと月わずか4875円ほど。

newsweekjp20241205104902-65e7e40784a076c6b6649e5127c5ded5f72c98c0.jpg

長屋の家賃は9畳で4875円。蝋燭は約10万5000円もかかった[出所=『新版 江戸の家計簿』(宝島社)]

また、当時の照明はというと、行灯か蠟燭、暖や熱は主に炭を使った。明和9(1772)年の炭の平均価格は1俵で銀4.1匁、すなわち現代価格で約4300円。蠟燭はピンからキリまであるが、高級な会津蠟は4.7貫目で約10万5000円にもなった。

長屋を管理する大家さんは親同然

路地の奥には共同の井戸、便所、ごみ溜めがあった。

長屋を管理するのは、地主や家持(家主)の代理人、大家だった。落語にもよく登場する大家は、家賃の取り立て、長屋の維持管理のほか、店子の身元引き受け人、旅行の際の手形申請、仲人、また、もめ事の仲裁、さまざまな相談役まで引き受け、まさに親同然だった。

大家の基本給は入居時の礼金や家賃の3〜5%、そして共同便所の糞尿の売買代金だったという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

三井物産、26年3月期純利益は14%減見込む 資源

ワールド

旧称「スターリングラード」の復活、住民に決定権=プ

ビジネス

消費者態度指数、4月は23年2月以来の低水準 基調

ワールド

米、イランのフーシ派支援に警告 国防長官「結果引き
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中