最新記事

朝ドラ

史上最低レベルの視聴率で視聴者が反省会まで 朝ドラ「ちむどんどん」、沖縄県民が挙げた問題点とは

2022年8月8日(月)12時00分
東野りか(フリーランスライター・エディター) *PRESIDENT Onlineからの転載

もしかしたら、この老人が、ドラマの流れと、沖縄で生まれ育ったキャクターたちを変えるゲームチェンジャー的な役割を果たすのかもと思いたい。

なぜなら、本土復帰前後の沖縄のあり方を丁寧に描写するシーンがほとんどないからだ。あるとすれば、やんばる地域特有の共同売店が舞台として頻出すること、車が左側通行になったこと、にいにいがドル紙幣交換詐欺に遭ったこと、それ以外は、当時の首相・佐藤栄作が国会で復帰を記念して「万歳!」と叫んでいる資料映像が挿入されているぐらい。今のままでは、何のために朝ドラは沖縄を舞台にしたのか、はなはだ疑問である。と書いているうちに、放送回は進み、沖縄戦の悲惨さを伝えるシーンが徐々に盛り込まれてきた。

「ちゅらさん」の二番煎じと呪縛。黒歴史にされた「純と愛」

さて、前出A子さんが大好きだったという「ちゅらさん」は、女優・国仲涼子の出世作で、朝ドラ史上初めて沖縄を舞台として描かれた。視聴率こそ最高ではなかったものの、続編が次々と作られ、2022年も再放送された。

「ちゅら」「おばぁ、おじぃ」「三線(さんしん)」「サーターアンダーギー」など、沖縄の独自の方言や文化が、周知されるようになったきっかけといってもいい。

八重山諸島の小浜島から那覇に移り住んだ一家の大黒柱の父は、いつでも三線弾きながら歌う陽気な男、住所不定無職のごく潰し長男、ヤマトンチュの男子と恋をし、夢に向かって東京で修業する主人公などと、話のベースはとても似ている。荒唐無稽なキャラ設定としてはどっちもどっち。

むしろ、「ちゅらさん」の主人公は、長男の兄が手を染めた怪しい商売に自ら肩入れするなど、暢子よりもクレイジーぶりが際立っている。しかし、どうしてここまで評価が分かれたのか?

「『ちゅらさん』の兄はどうしようもないけれど、ちゃんと心を入れ替えて家族に寄り添っていました。でも、にいにいには改心の気持ちがなくいつまでも甘ったれな長男坊から成長しない。ちゅらさんの登場人物も最後には立派に自立します。しかしなんと言っても"おばぁ"の存在が大きいですね。演じた平良とみさんは、リアルなおばぁといった感じで、彼女が発する言葉一つひとつが心に染み入りました」(A子さん)

「ちゅらさん」をまねたものの、視聴者が共感するストーリーやキャラクター、おばぁのようなリアルかつ強烈な演者を揃えることができなかったということか。

何かにつけ、デキがよかった「ちゅらさん」と比較されるのは、製作陣もつらいだろう。

「沖縄が舞台の朝ドラには『純と愛』(2012年度下半期に放送、夏菜・風間俊介主演)もあります。朝ドラにしては珍しく、ちょっと暗くて救いのない話で最後もバッドエンド。よく言えば"攻めた"ドラマで、私は嫌いではなかったのですが、視聴率が低く結果につながらなかった。『純と愛』の悪夢を封じるために、陽気な王道路線に戻したのかなとも思います」(B子さん)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ・メディア、予測市場事業に参入へ

ビジネス

SKハイニックス、第3四半期営業利益は過去最高 A

ビジネス

日産、メキシコ合弁工場での車両生産を11月で終了=

ワールド

米、安全保障上の脅威と見なす中国ハイテク企業への規
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」にSNS震撼、誰もが恐れる「その正体」とは?
  • 2
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理に押し上げた「2つの要因」、流れを変えたカーク「参政党演説」
  • 3
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 4
    楽器演奏が「脳の健康」を保つ...高齢期の記憶力維持…
  • 5
    「ランナーズハイ」から覚めたイスラエルが直面する…
  • 6
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 7
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 8
    「何これ?...」家の天井から生えてきた「奇妙な塊」…
  • 9
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 10
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中