最新記事

ドラマ

イカゲーム、物語をより奥深くする「韓国文化」という「隠し味」を解説

5 LOST KOREAN ELEMENTS

2021年12月14日(火)12時29分
スー・キム

3. 仲間意識

第6話「カンブ」で、「ビー玉遊び」のゲームの最中、001番のおじいさん(オ・ヨンス)は456番のギフン(イ・ジョンジェ)に自分たちは「カンブ」だと言い、「カンブ」とは「何でも分け合う親友」だと説明する。

だが英語の字幕では、カンブは「相手のものと自分のものを区別せず」共有する、というせりふがない。おじいさんのその後の行動のカギとなる言葉だ。

おじいさんはもう1度そのせりふを繰り返してから、「受け取れ、君のものだ。私たちはカンブだろう?」と言う。第6話の要となるこのせりふ、韓国人の情(韓国語で「ジョン」)の深さも捉えている。

4. 学歴社会

サバイバルゲームが展開するにつれて視聴者は、その経歴のおかげで他の参加者より立場の有利な参加者がいることに気付く。例えば、ある外科医は自分の技能を生かしてゲームを有利に運ぼうとする。

一方、ミニョが浮き彫りにするのは、サバイバルゲームを生き抜こうとする別の階級の人々だ。彼女はギフンに自分とチームを組んでほしいと頼むとき、他人を出し抜くのは得意だと豪語し、「勉強したことなんかないけど、頭がいいのはマジ」で「詐欺だけで前科5犯」だと言い放つ。

韓国社会において学歴は、社会経済的な階段を上る唯一の方法として、昔から大切にされてきた。学歴崇拝の歴史は、朝鮮最後の統一王朝である李朝の時代(1392~1910年)までさかのぼる。当時、高貴な身分は家柄だけで決まるのではなく、支配階級になるためには何年も勉強して官吏登用試験(科挙)に合格しなければならなかった。こうした背景は韓国人には常識だが、外国人にはピンとこないだろう。

ミニョのせりふは、教育を受けることができるのは得てして、それだけの余裕のある人々に限られるという状況に光を当てる。韓国の大学受験競争は実に熾烈だ。しかし、たとえ狭き門を突破できたとしても、授業料が払えないケースもある。

階級間の緊張関係はギフンと幼なじみのチョ・サンウの関係にも描かれている。第8話「フロントマン」で、ギフンはサンウと激しく言い争った末に言う。「俺がここにいるのが情けないなら、双門洞(サンムンドン)の誇りである、SNUの天才チョ・サンウがなぜここにいる?」

英語の字幕でSNUとなっているのは韓国一の名門、ソウル大学のことだ。といっても、サンウは裕福な家柄の出ではない。ソウルの双門洞というつつましい「下町」の出身だ。監督のファンもサンウと同じように、双門洞で生まれ、母子家庭で育てられた。ファンもソウル大学の卒業生で、祖母はサンウの母親と同じく露天商をしていた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ホルムズ開放巡り約40カ国がオンライン会合、英国主

ビジネス

米2月の貿易赤字、4.9%増加 輸出過去最高も輸入

ビジネス

米新規失業保険申請、9000件減の20.2万件 一

ビジネス

米国株式市場・序盤=急反落、ダウ650ドル安 イラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 2
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受給年齢」
  • 3
    破産申請の理由の4割以上が「関税コスト」...トランプ関税が米国民に与える「破産」の苦しみ
  • 4
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 5
    先進国が出生数の減少を嘆く必要はない? 「経済的…
  • 6
    日本の男女の賃金格差は世界でも突出して大きい
  • 7
    「一般市民に敵意なし」...イラン大統領が米国民宛て…
  • 8
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 9
    自国の国旗損壊を罪に問うことの深刻さを考える
  • 10
    200年前の沈没記録が裏付けられた...捕鯨船を海の藻…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 8
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 9
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中