最新記事

医療

平凡な文学青年だったが、頑張れば、ちゃんと医者になれた──「ヒドイ巨塔」で

2020年11月18日(水)21時15分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

taa22-iStock.

<コロナ禍で今、医療関係者への注目が高まっているが、そもそも医者になるとは、どういうことなのか。小児外科医として医師の道を歩み、ノンフィクション作家としても活躍する松永正訓氏が、初のエッセイを書き下ろした>

入学志願者数は2018年をピークに減少傾向に入ったとされるが、それでも依然として高い人気を誇るのが大学の医学部である。

新型コロナウイルスがもたらした不況で、就職に強い医学部を目指す子供が増えるのか、あるいは、院内感染のリスクや経営悪化を理由に敬遠する傾向が強まるのか。2020年はコロナ禍が向かい風となったようだが、今後数年の状況はまだ分からない。

ただ、人類の苦境にあって人命救助にあたる医療関係者の姿に憧れを持った子供も多いという。

小児外科医として医師の道を歩み、現在は小児科・小児外科クリニックを開業している松永正訓氏は、小学館ノンフィクション大賞受賞作家として『運命の子――トリソミー短命という定めの男の子を授かった家族の物語』(小学館)、『発達障害に生まれて――自閉症児と母の17年』(中央公論新社)など多数の著作がある。

医者になって、34年。自分は取り立てて優秀だったわけではない。平凡な文学青年だった。それでも、頑張れば、ちゃんと医者になれた。
donjiriibook20201118-cover.jpg
いま改めて、「医者という仕事は悪くない」との思いを強くしているという松永氏が、初のエッセイを書き下ろした。未来の医療を担ってくれるかもしれない若い人たちや、その保護者に、自身の経験をシェアし、参考にしてもらえたら――。

『どんじり医』(CCCメディアハウス)は、笑いあり、涙あり。一人の医師の青春譚だ。その一部を2回にわたって抜粋する。

◇ ◇ ◇

はじめに

小中学生のなりたい職業ランキングで、医者が上位に上がってきているらしい。これは、新型コロナウイルスの流行によって医療関係者にスポットが当たっているからだそうだ。ま、コロナウイルスの治療に当たるのはかなりしんどいが、医者という仕事は悪くない。ぼくは医師になって34年目だが、最近とくにそういう思いが強い。だから、小中学生が「ぼく、医者になりたい!」と言えば、応援したい。

ぼくは1987年(昭和62年)に千葉大学医学部を卒業して小児外科医になった。外科の世界というと、みなさんはどんなものを想像するだろうか? え、山崎豊子さんの『白い巨塔』? うん、それはかなり当たっている。『白い巨塔』は大阪大学がモデルだという説が強いが、実は千葉大学がモデルになっているという意見もある。第二外科の故・中山恒明先生は食道がんの世界的権威で、財前五郎のまさにモデルだったという噂がある。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル首相、反ユダヤ主義助長と豪首相を非難 ビ

ビジネス

インタビュー:プライベートデット拡大へ運用会社買収

ワールド

ウクライナのNATO加盟断念、和平交渉に大きく影響

ワールド

米ブラウン大銃撃、当局が20代の重要参考人拘束
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中