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BTSが変えた世界

グラミー賞ノミネートのBTSとその音楽がこんなにも愛される理由

RESPECT YOURSELF!

2020年11月25日(水)11時25分
竹田ダニエル(音楽エージェント、ライター)

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9月末の米番組『トゥナイト・ショー』では韓服姿で、ソウルの景福宮の前でパフォーマンス NBC-NBCU PHOTO BANK/GETTY IMAGES

数々のKポップアイドルが激しい競争をくぐり抜けてもアメリカへの本格進出がかなわなかったなかで、なぜBTSがブレイクできたのか。その快挙を語る際には、彼らが直面してきた数々の試練も決して忘れてはならない。

BTSが大スターになった現在でもアジア人であることを嘲笑した人種差別的な言葉や、アイドルに対する偏見に基づいた不当な評価はなくならない。西洋・英語圏・白人中心の価値観で音楽やカルチャーを評価してきたことへの違和感が、BTSの台頭によってやっと議論され始めていること自体が快挙でもある。

人種や言語の壁が立ちはだかるなかで、BTSはその芸術性やイノベーション性、そして曲のメッセージやチャリティー活動を通じた社会貢献が世界中で高く評価されている。テレビの司会者やアスリート等、大スターを含む人々のリスペクトを獲得し、英語圏出身や白人でなくとも尊敬されることが可能だと証明した。

かつてはアジアのアイドルが見下されていたような音楽業界において、彼らは大きな変化をもたらしたパイオニアだ。

BTSのブレイクの大きな起爆剤は何と言ってもパフォーマンス。見る人を引き付け感動させるカリスマ性は、歌唱力と驚異的にそろった踊りにとどまらない。個性とお互いへの強い信頼を生かした、息をのむようなアクロバットやドラマチックな「演技」なども特徴的だ。

「ボーカルライン(JIN、JIMIN、V、JUNG KOOK)」「ラップライン(RM、SUGA、J-HOPE)」「ダンスライン(J-HOPE、JIMIN、JUNG KOOK)」とそれぞれの強みを生かすようにパートを分け、曲中の役割を最適なメンバーに振り分け、ダンスのフォーメーションも個性が引き立つようになっている。

ダンスに苦手意識があるメンバーがいても、その「人間的な魅力」が最大限発揮される。メンバー自身が楽曲の制作過程に濃密に関わっているからこそ、パフォーマンスが「歌わされているもの」「踊らされているもの」にはなっていない。音楽とストーリーが一体となって表現され、その音楽に対する熱意と誠意が自然と伝わってくる。

BTSの主軸にあるのが「若者を傷つける社会に対して声を上げ、NOを突き付け、自分を愛することの大切さを伝え続ける」というメッセージ。

具体的には、「作られたエンタメ」の限界をはるかに超える、一人の人間として尊敬できるロールモデルであること、チャリティーなどに対する姿勢から分かるようにメンバーだけでなく制作陣の社会的意識の高さが突出していること、そして一つの形にとらわれることなく、常に流動的に変化し、進化を大切にしていることだ。

いま挙げた3つの価値観やスキルからだけでも、日本のエンタメ業界が学べるようなことはたくさんあるのではないだろうか。

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