最新記事

映画

カンヌやアカデミーだけじゃない! 個性派作品が集まるユニークな映画祭

2019年5月20日(月)19時45分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

カンヌ国際映画祭が世界から注目されるのはレッドカーペットの裏で映画の見本市が行われていることも大きい Jean-Paul Pelissier / REUTERS

<今年も世界の人気スターや映画作りの巨匠が集うカンヌ国際映画祭が開催されているが、こうした巨大な映画産業の世界とは一線を画したユニークな映画祭がある>

今月14日から南フランス・カンヌで第72回カンヌ国際映画祭が幕を開けた。大御所から気鋭にいたるまで世界中から多くの映画関係者が集まり25日まで華々しく開催される映画の祭典だ。カンヌ映画祭は、ベルリン映画祭とヴェネツィア映画祭に並び世界三大映画祭の一つといわれている。もちろん、それだけでも十分に注目されるに値するが、我々映画関係者にはもう一つ大事な「フィルムマーケット」と呼ばれる映画の売買が行われる見本市がセットで開催されていることもあり、カンヌは世界の数ある映画祭の中で重要な存在となっている。ちなみに、カンヌは秋にロサンゼルスで行われるアメリカン・フィルム・マーケット(AFM)、イタリアのミラノ国際映画見本市(MIFED)と並ぶ世界三大映画見本市でもある。特に、春のカンヌと秋のAFMはちょうど1年の上期・下期と分かれて開催され、この見本市に合わせて大作が売り出されるため世界各国から映画バイヤーが押し寄せるのだ。

アジアで注目の映画祭は?

さて、カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンの御三家以外にも大規模な国際映画祭は世界各地で開催されている。我々の住むアジアでも大きなものは日本の東京国際映画祭。韓国の釜山国際映画祭。香港国際映画祭などがある。特に、香港映画祭は、監督や俳優などの新しい才能を発掘することに長けている点が評価されて、世界的にも注目されつつある。韓国の釜山映画祭も、アジア作品にフォーカスする部門や、新人発掘を目的にした賞など、積極的に実力のある若手を支えたいという映画祭の意志が感じられる。まさに、映画館で通常上映される映画作品と映画祭の違いはこういうところにある。有名監督や人気俳優たちが作った作品や配給元が大きい作品は、映画祭出品後に全国公開が控えており、わざわざ映画祭に出向かなくても見ることができる。そうした作品でなく映画祭だからこそ上映でき、そこから実力のある新人が羽ばたいていけるインキュベーターとなる場所になってほしい。

アジアでいえば、最近ハリウッド映画でもその存在感を見せつけている中国も見逃せない。有名なのは上海国際映画祭と北京国際映画祭だろう。特に、上海映画祭は2015年に日本の東京国際映画祭と協力連帯の発表がされた。それまでにも数多くの日本作品が何らかの賞を受賞してきたが、今後さらに多くの作品が上海映画祭の場において上映されていくことだろう。一方、北京映画祭は2011年から始まった世界の映画祭の中では比較的新しい映画祭だ。日本映画の上映は2015年の園子温監督作品「ラブ&ピース」が初めてコンペティション部門で上映された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界の食料価格、10月は2カ月連続下落 供給拡大で

ビジネス

ホンダ、半導体不足打撃で通期予想を下方修正 四輪販

ワールド

ロシアの限定的なNATO攻撃、いつでも可能=ドイツ

ビジネス

FRB、近くバランスシート拡大も 流動性対応で=N
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2人の若者...最悪の勘違いと、残酷すぎた結末
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「これは困るよ...」結婚式当日にフォトグラファーの…
  • 6
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 8
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中