最新記事

大学

アメリカの女子大には「上昇志向の強い」女性が集まる

2015年12月26日(土)08時05分

 むしろ、社会に残っている女性への差別や偏見と「戦う姿勢」を持った学生が多く、各大学の誇る同窓会組織なども利用しながら、社会的には「より上昇志向の強い」学生が集う場所だというイメージの方が実情の説明としては合っているようです。

 ヒラリー・クリントン氏がウェルズリーの卒業生(院はイェールの法科大学院)というのも、決して偶然ではないですし、彼女がウェルズリーに在学していた際にベトナム反戦運動に積極的に参加していたというのも、アメリカの「女子大カルチャー」としては例外ではなく、むしろ本流に属すると見るべきです。

 幕末の戊辰戦争の際に、会津藩士の娘として官軍と戦った後に単身アメリカに留学した山川捨松という女性がありました。彼女はヴァッサーに入学して、優秀な成績で卒業しています。日本女性として、アメリカの学士号取得第1号は彼女です。

 帰国後の山川捨松は、やがて陸軍のリーダーとして日露戦争の指導をする大山巌の妻となりますが、今でもヴァッサー・カレッジのホームページには山川のエピソードが掲載されています。今に語り継がれているイメージは、大山元帥夫人としての彼女というよりも、会津で奮戦した女傑という伝説であり、それもまたアメリカの「女子大カルチャー」というわけです。

ハイレベル教育を志向する公立大学

 次に名門大学に比肩する教育を行っている大学群として、「公立大学に附設されたオナーズ・カレッジ(Honors College)」という存在があります。

 東海岸で言えば、ペンシルベニア州のペンシルベニア州立大学(通称「ペンステート」The Pennsylvania State University)、ニュージャージー州のラトガース大学(Rutgers University)、中部ミシガン州のミシガン大学(University of Michigan)などは、大規模な公立大学として有名であり、卒業生は全米の各方面で活躍しています。

 こうした大学は、ともすれば優秀な学生にとっては「名門私大の滑り止め」という位置づけ、つまり併願時の「セーフ・スクール(安心して合格できる大学)」というイメージになっていました。つまり、優秀な学生の獲得競争では遅れを取っていたのです。

 そこで各校は、通常の各学部学科とは異なる「優秀な学生の在籍するカレッジ」として「オナーズ・カレッジ(特待生の在籍学科)」というものを設けるようになりました。

 この「オナーズ・カレッジ」ですが、出願は通常どおり母体の州立大学へ行います。その際に、「オナーズ・カレッジ」への入学希望がある場合は、その旨を届け出るというシステムになっている大学もありますし、その場合には追加のエッセイを提出しなくてはならないということもあります。

 そして、出願者の中から、あるいは出願者中の希望者の中から選抜する形で、特に成績優秀な学生には「オナーズ・カレッジ」入学が許可されるという仕組みとなっています。

※第4回:米大学がいちばん欲しいのは「専攻が決まっている学生」 はこちら

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米雇用統計、4月予想上回る17.7万人増 失業率4

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中