最新記事

株の基礎知識

「人気のある会社への投資」が失敗する理由

2022年10月26日(水)12時10分
朋川雅紀 ※かぶまどより転載
楽天

「代表性ヒューリスティック」を使って投資をするのは危険だ(写真は本文と関係ありません) Sam Nussey-REUTERS

<株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」がある。儲かる株を見抜くポイントと意外な買い時とは?>

人気のある会社への投資

人気のある会社の株式を買うことは「良い投資」と言えるのでしょうか。

この問題に答える前に、「ヒューリスティック」という言葉についてお話ししたいと思います。おそらく、この言葉を初めて聞いた方がほとんどだと思います。

■ヒューリスティックとは?

ヒューリスティック(heuristic)」は「直感的推論」と訳されることがあります。短い思考プロセスですばやく結論を出すための方法です。短い時間で行えますが、必ずしも最適とはいえない解決策を見つける思考パスです。

つまり、直感的なひらめきによって、ある推論を完成させてしまうことが、これに当たります。

人間は、情報を処理するだけの十分な時間がない場合や、あまりにたくさんの情報に直面する場合、今まで経験したことがない問題に直面した場合、問題があまり重要ではない場合などには、ヒューリスティックを使用する傾向があると言われています。

■公務員はマッチョか、それともスリムか

ヒューリスティックのひとつに「代表性ヒューリスティック」があります。「代表性ヒューリスティック」とは、典型的な事象でまとめて判断をくだす簡便的意思決定を指します。

例えば、公務員と商社マンの2人が並んでいます。ひとりは色黒でガッチリした体型、もうひとりは色白で細面だとします。どちらが商社マンで、どちらが公務員かと尋ねられたら、おそらくほとんどの人が「色黒でガッチリした体型の人が商社マンで、色白で細面の人が公務員」と答えるでしょう。

これは、各人がもともと持っているイメージであったり、自分の知り合いを連想したうえで導いた結果だったりします。見た目と実際の職業が結びつく論理的根拠はありません。実際には、色白で細面の商社マンだっているでしょうし、色黒でガッチリした体型の公務員だっているはずです。

人に限らず、モノの場合も同様な理解が成立します。特定の人やモノが、それが属するグループや集団の典型、あるいは多数のメンバーに共通して見られる特性であれば、その対象はグループの代表と認識されやすいのです。

人気のある会社と、儲かる株

話を投資に戻します。投資家は、「人気のある会社が儲かる株(良い投資)である」という確率を過大評価してしまう傾向があります。というのも、儲かる株(良い投資)と人気のある会社は似ているからです。

果たして、実際のところはどうなのでしょうか。

人気のある会社は投資家の注目を集め、株価の勢いがあります。その勢いに飛び乗るのは短期的に儲かるかもしれませんが、いわゆる「高値掴み」になってしまい、成功の確率は低くなってしまいます。

それにもかかわらず、投資家には、「人気のある会社=良い株(投資)」と考える傾向があります。なぜなら、彼らは「代表性ヒューリスティック」を使っているからです。

(参考記事)「損切りは早く、利食いは遅く」 10倍株に出会えない投資家が見逃していること

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ

ビジネス

テスラ自動車販売台数、4月も仏・デンマークで大幅減

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中