最新記事

勉強

「頭の切れる人」とそれほどでもない人の決定的な差 いきなり考えても決してうまくいかない理由

2021年4月10日(土)11時30分
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授) *東洋経済オンラインからの転載
勉強する女性

できなくてもかまいません。クセをつけることが大事です Wiphop Sathawirawong - iStockphoto

誰もが大量の情報を簡単に手に入れられる今、オリジナリティーのある発想力がより強く求められています。
その中において「『頭のよさ』とは習慣である」と主張するのは『東大教授が教える知的に考える練習』の著者、柳川範之・東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授。本書より自らの体験を交えた発想の生み出し方について解説します。

いい考えを引き出すには土台が必要

考えるためには、まず材料が必要です。考えるための材料になるのが情報です。しかし、情報を単純に集めるだけでは、すぐにいい考えが生まれるわけではありません。

いい考えを引き出すには、そのための土台を頭の中につくっておくことが大切になります。

よく誤解されているのですが、「情報収集→それをもとに考える」というだけではうまく考えられないのです。実は、情報を見て、そこから初めて考えるのではなく、情報を頭に入れる前に、少し手間暇をかけて、「考えるための土台」をつくっておくことが大切だからです。

これは、「考えること」を「調理をする」ことに例えるならば、「考えるための土台を作る」ことは、「調理道具をそろえておく」ことに相当します。どれだけおいしそうな肉のかたまりがたくさん届いたとしても、それを切る包丁も焼くコンロもなければ、おいしい料理をつくることはできないでしょう。当たり前のことですが、適切な調理道具をそろえておくことは、料理をするうえでの最低条件です。

ところが、「考える」という作業については、この最低限の条件がほとんど考慮されていないのは不思議なことです。あたかも素材をたくさん集めさえすれば料理ができるかのように誤解をして、情報を集めている人が多いのです。しかし、調理道具、つまり「考えるための土台」がそろっていないために、ほとんど調理ができず、きちんと考えることができないのは、もったいないことです。

残念ながら、この「考えるための土台」づくりについては、学校等でも、意識して教えられることがほとんどない気がします。もし、いくら考えることに時間を費やしても、上滑りしてしまうと悩んでいる人がいたら、それは、頭の中に土台がないことが原因の可能性が高いのです。言い換えれば、土台さえしっかりしていれば、成果がどんどんあがるはずです。

それでは、どんな調理道具をそろえればいいのでしょうか。頭の中に「考えるための土台」をつくるというのは、具体的に何をすればいいのでしょうか。

まず必要なことは、発想を変えることです。「情報はそのままでは役に立たない」「調理しなければ使えないんだ」という発想をもつこと。簡単ではありますが、これがいちばん大事な道具です。どんな情報もどんな知識も、そのまま丸のみするのではなく、それを頭の中で加工して初めて、力になってくれる。そういう発想で情報に接することが大切です。

発想を変えるというのは、心のクセを変えるということでもあります。つまり、考えるための土台をつくるというのは、発想のクセを変えていくことです。簡単なことではありますが、実際に実行しようとするとなかなかできなかったりします。しかし、けっして難しいことではないので、続けていけば、きっとできるようになります。

次に必要な「考えるための土台」は、具体的なものを抽象化して捉えるクセをつけることです。情報を抽象化して理解するというのは、考えるプロセスの中においてとても大切です。なぜなら多くの場合、求められるのは、かなり個別的で今までに見たこともない問題の解決策なので、どこかで得た情報をそのまま使えるわけではないからです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中