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投資の基礎知識

ラップ口座は有益? 金融機関は教えてくれない資産運用法

2018年7月2日(月)10時20分
高橋 忠寛 ※株の窓口より転載

アクティブはコストが高いと心得よ

では、なぜプロが運用するのに市場平均を上回り続けることができないのでしょうか? 理由は2つあります。投資に必勝法のようなものは存在しないということと、アクティブ・ファンドの運用手数料が高いことです。

もちろん、なかには市場平均を大きく上回る実績を上げている投資信託もありますが、全体の中で言うと少数派です。金融の専門家でも事前にそういった商品を選ぶのが難しいわけですから、一般の人がそのような投資信託を選ぶことが、どれほどの難易度なのかを想像できることと思います。

「投資信託が好きで、研究も大好き!」という人であれば、趣味と実益を兼ねて選別に取り組めばいいでしょう。しかし、多くの人にとっては、アクティブ・ファンドを選ぶことに時間と労力を費やすよりも、インデッックス・ファンドを利用したほうが効率的です。

無駄なコストをかけないために

ラップ型商品などが、本当に個々人の状況に合わせたオーダーメード形式で、リスク許容度や投資経験、運用意向を緻密に分析して、ベストな商品の組み合わせで提案をしてくれたり、資産管理のサポートをしてくれたりするのであれば価値があるかもしれませんが、現状では、そこまでのサービスを期待できるものではありません。

よく見ると、グループ会社が運用する手数料の高い商品を組み合わせているだけとしか思えないようなサービスもありますし、最初は親身になってサポートしてくれた担当者も、何年かすれば転勤でいなくなります。このように考えると、わざわざ高いコストを払ってまで、ラップ型商品を活用する意味はほとんどないのです。

それよりも、たとえばETFやインデックス・ファンドのような、ローコストかつシンプルな商品性を持った投資信託を組み合わせれば、よりリーズナブルに、ラップ口座で運用するのと遜色のないパフォーマンスが得られるはずです。ETFとは「Exchange Traded Funds」の略称で、証券取引所に上場され、株式と同じように売買されているインデックス・ファンドのことです。

金融商品はシンプルがいちばん

仕組みがシンプルな商品であればあるほど、中身をわざわざ複雑化して、よくわからないコスト負担をお客さまに強いるようなことができなくなります。シンプルでコストの低い商品を長期間保有することこそが、投資信託を効率的に活用するための基本スタイルです。

金融機関の担当者は、本当に利用価値のある商品を教えてくれません。自分でETFやインデックス・ファンドなどローコストでシンプルなものを組み合わせ、効率的な資産運用に取り組むことをお勧めします。

[筆者]
高橋 忠寛[たかはし・ただひろ]
株式会社リンクマネーコンサルティング代表取締役 上智大学経済学部経済学科卒業。東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)、シティバンク銀行での10年超の銀行勤務を経て、2014年9月に独立。投資助言代理業者[関東財務局(金商)2855号]として、金融商品の販売には関わらない完全に独立した立場で、資産運用を中心に資産管理についての総合的なアドバイスを提供している。著書に『銀行員が顧客には勧めないけど家族に勧める資産運用術』(日本実業出版社)がある。 ファイナンシャル・プランナー(CFP®) 日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

※当記事は「株の窓口」の提供記事です
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