最新記事

教育

なぜ日本の大学教授の給料はアメリカの大学より低いのか?

2018年4月26日(木)16時55分
松野 弘(千葉大学客員教授)

アメリカの一流大学(私立大学・州立大学)の平均教授給料比較

日本の大学教員(教授・准教授・専任講師)の給料(年収)は、国立・公立・私立を問わず、押しなべて年功序列型の給与体系であるのに対して、欧米の大学は大学の収益力、教員の知的生産力・知的ブランド力による成果主義型の給与体系である。

日本の大学の場合、明治維新の近代国家への移行過程の中で、行政職員の給与体系がはじめに決められ、その後帝国大学が誕生し、行政職員の給与体系に準拠して大学教員の給料が決められた経緯がある。

したがって、明治以降、高級官僚の給与と大学教員の給与には「格差」があり、大学教員の給与は高級官僚(中央省庁の課長以上の役職者)より低くなっている(竹内洋『大学という病』中央公論新社、2001年)。

これに対して、アメリカの大学は大学に対する社会的評価によって、大学序列が決められている。カーネギー教育振興財団による大学分類(2009年)によると、全大学数における比率は(1)高度な研究大学 2% (2)研究大学 2% (3)博士課程大学 2% (4)修士課程大学 15% (5)学士課程大学 18% (6)短期大学 42% (7)特別な目的をもった大学 19% となっている(松野弘『大学教授の資格』NTT出版、2010年)。

このように、(1)~(3)群の大学がいわゆる一流といわれる研究大学となり、大学教員としての報酬(年収)も高い水準にある。アメリカでノーベル賞を輩出している有名大学の大半は(1)群に属している。

アメリカの著名な教員専門誌『ザ・クロニクル・オブ・ハイヤー・エデュケーション』の資料、「アメリカにおける正教授の平均最高報酬(2015-2016)」(2017年)によれば、大学教授の平均報酬(年収 2015-2016)でみると、以下の順位となっており、すべて私立大学である。

1位 ハーバード大学 23万0292ドル(約2530万円)
2位 スタンフォード大学 22万7259ドル(約2500万)
3位 シカゴ大学 22万5729ドル(約2480万円)
4位 コロンビア大学 20万9475ドル(約2304万円)
5位 MIT 20万4138ドル(約2245万)
6位 ペンシルベニア大学 20万1978ドル(約2220万円)
7位 プリンストン大学 20万0403ドル(約2204万円)
8位 イェール大学 19万8369ドル(約2182万円)
9位 ニューヨーク大学 19万5939ドル(約2155万円)
10位 カリフォルニア工科大学 19万3941ドル(約2133万円)

州立大学では、15位にカリフォルニア大学ロサンゼルス校 18万4509ドル(約2030万円)、18位にカリフォルニア大学バークレー校 17万5617ドル(約1932万円)が入るくらいで、圧倒的に私立の超一流大学の教授の給料が高いことがわかる(1ドル=110円で換算。[表1]を参照のこと)。

他方、大学教授の報酬が低い事例としては、学士課程レベルのコミュニティカレッジの中で最も低くランクされている、グレース・バイブル・カレッジだ。ミンシガン州にあるキリスト教福音原理主義派の小規模な大学(学生数900人程度)で、教授の報酬は3万7665ドル(約414万円)となっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、カナダに35%の関税 他の大半の国は「一律15

ワールド

ブラジル大統領、米50%関税に報復示唆 緊張緩和へ

ワールド

カナダ、ASEANとのFTA締結目指す 貿易多様化

ワールド

ゼレンスキー大統領、物資供給や対ロ制裁強化巡り米議
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中