最新記事

キャリア

リーダー層も苦手......日本の英語力不足はもはや「国難」だ

2018年3月21日(水)11時41分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

ある外資系グローバル企業の幹部によると、ダイバーシティとはよくいわれるけれど、女性よりも外国人活用の方が経営へのインパクトは大きいとのこと。まさに外国人のいない同質性の高い経営幹部会議ではインパクトが弱く、新たな戦略も出にくいのです。そもそも、グローバル企業の役員が日本人男性だけで占められるのは異常であるという感覚も必要です。

◇ ◇ ◇

死屍累々――巨大なビジネス損失につながるお寒い症候群

海外の優秀な人材が日本に来ない点についてはすでに指摘しましたが、日本企業の海外事業、グローバル事業についての悲惨な現状についてもお伝えしなくてはなりません。

ビジネスの成功例は大きく取り上げられますが、失敗例は倒産につながるような大赤字か不祥事でもない限り、マスメディアでは大きく取り上げられません。海外事業から撤退したなどが報じられる程度です。

しかし、海外事業の失敗の事情をよく検証してみると、広い意味でのコミュニケーション不足、コミュニケーションがとれる人材不足が大きな要因になっている例が多数あります。

以下の例は、私が直接関与した、または見聞した「症候群」です。どの会社であるかわからないように一部脚色していますが、根幹となる問題点は変更していません。

「英語できなくても駐在」症候群

まずは英語をないがしろにしている事例です。「英語はあまりできなかったが、業務に支障はなかった」という海外赴任者の声は意外に多くあります。もし、このような話を聞いて、海外赴任の場合はそこまで英語力を強化しなくてもいいと判断するのであれば早計であり、ビジネスの前途は多難です。

とりあえず、本当は英語ができるのに「あまりできない」と謙虚に言うケースは除きます。

では、なぜ英語ができなくてもなんとかなったのでしょうか。私は、以下のように解釈するべきだと思います。

第一に、海外赴任してもほとんど日本人と付き合っていた場合です。海外赴任をすると、外国での生活の不馴れや語学問題などのため、日本人社会にどっぷり浸かることは一般的です。日本の資本が入っていない完全な現地企業やグローバル企業での勤務の場合、または現地の人と結婚している場合などを除き、日本企業の現地法人に転勤した場合は日本語での会話が多くなりがちです。

中国、台湾、韓国はやや例外ですが、どんな国でも日本語ができる人材は非常に限られています。仮に話せても、実際の勤務にまったく支障のないレベルとなるとぐっと少なくなります。となると当然、大多数の現地の人々との交流はできません。

世界のほんの一部に過ぎない日本人社会での付き合いだけでは、海外赴任でもっとも大切な要素である、現地の人々が何を考えてどんな生活をしているかということがわかりません。

第二に、現地での立場が購買担当である、または親会社の意向があるなど立場が強い場合です。たとえば購買担当なら、数字やコアとなる品質についての英語がわかれば大きな支障がなく、拙い英語であっても相手が「お客様」と思い、英語を理解しようとしてくれるでしょう。親会社の意向が強い場合も、英語ができなくてもなんとかやり過ごすことができます。

第三に、これはそもそも論ですが、英語や現地語ができたらさらにパフォーマンスが上がった可能性があるということです。「英語ができなくてもなんとかなった」というのは実は目標値が低すぎただけで、その低い目標を達成したに過ぎない場合もあります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」

ワールド

米、インドネシアに19%関税 米国製品は無関税=ト

ビジネス

米6月CPI、前年比+2.7%に加速 FRBは9月

ビジネス

アップル、レアアース磁石購入でMPマテリアルズと契
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中