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リーダー層も苦手......日本の英語力不足はもはや「国難」だ

2018年3月21日(水)11時41分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

「本社が英語できない」症候群

次のような事例もありました。海外にいくつかの現地法人があるメーカーA社では、数人の日本人駐在員を除き、現地出身の社員で占められていました。駐在員は現地語はもちろん英語も雑談程度で堪能ではなく、コミュニケーションは不足しがちでした。現地社員の本音は、あんなに語学ができない駐在員はいても仕方ない、駐在員の高額な海外赴任手当の一部を私たちの給料に回してほしいというものでした。しかし、本社はどうしてもその日本人駐在員にいてほしかったのです。なぜだと思いますか。

それは、本社の経営幹部に英語が十分できる人材が少なかったからです。現地は現地社員に任せるということは随分前から言われていましたが、遅々として進みませんでした。その最大の理由の一つが、本社サイドの英語化が遅かったことです。現地を現地出身社員中心にマネジメントすると、一部東アジアの国を除いては本社とのテレビ会議が英語にならざるを得ません。そのようなテレビ会議に対応できる経営幹部が日本にいなかったのです。

このように、社員に英語を学べ、これからは英語ができないとダメと言いながら、自分たちが英語ができないという経営幹部が多いのが現状です。

「英語ができないとのクレームで販路失う」症候群

中国に進出したある部品メーカーの現地法人に対し、欧州にある非英語圏の世界的メーカーから製品の引き合いがあったそうです。その現地法人は日本語ができる中国人に依存した体制になっていたので、日本人駐在員の中で英語ができる人材が不足していました。欧州の世界的メーカーからは、英語ができる人材を交渉の場に出してほしいと要請があったにもかかわらず、英語のできる人材を出すことができなかったため、結局、その案件を受注できなかったとのこと。これは、「英語できなくても駐在」症候群の発展形といえます。

「海外M&A失敗」症候群

M&Aの専門家によると、海外M&Aの90%以上は失敗しているとのこと。高値で買わされて、買収後にシナジーを出すような経営ができていないからです。その要因の一つとして、文化やバックグラウンドなどの理解を含めたコミュニケーション能力不足があります。あまりにコントロールしすぎるか、野放しにしすぎるかのいずれかの場合が多く、海外M&A後の両社の制度面・文化面の統合であるPMI(Post Merger Integration)までを視野に入れたM&Aが少ないのです。

日本経済新聞などでは、大型買収、海外進出などは記事になる一方で、買収失敗、海外進出失敗は少なくとも大きな記事にはなりません。しかし実際には、買収や海外進出の失敗はごまんとあり、その背景に駐在員や交渉担当の英語力不足の問題があるのです。そもそも国内の日本人の英語力、少なくとも海外進出している大企業の管理職クラスの英語力が伸びれば日本経済は大きく変わるでしょう。非常に辛口かもしれませんが、これは真実です。だからこそ、その対応となる習慣についてお話しさせてください。

◇ ◇ ◇

本書ではこの後、「王道なし――地道に単語や表現を覚える習慣」「ライティングはネイティブチェックに出す習慣」「毎朝音読をする習慣」......と挙げられていく。自分自身も日々必死に英語を勉強しているという著者からのアドバイスだ。


『世界で通用する「地頭力」のつくり方
 ――自分をグローバル化する5+1の習慣』
 山中俊之
 CCCメディアハウス

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